明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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 夕方帰宅した二人は脱力してしまった。なんだかんだ張り詰めていたらしい。
 澪が白玉の食事を出す間に桐吾がシャワー、次に澪がシャワーを使い桐吾が人間用のレトルトを準備した。秋の早い夜が降りた頃にやっと人心地つく。
 神気をたくさん使った白玉は疲れたそうで、ガツガツ食べるとすぐ澪の部屋の猫ちぐらにもぐり込みにいった。外で化けて過ごすのはそれなりに大変なのだ。

「そうだ澪、祝杯をあげないか」

 白玉を見送って桐吾は提案した。冷蔵庫からビールと梅酒ソーダの缶を出してくる。

「いちおう見合いを断ったんだしな。一区切りということで」
「……お酒ですか? 私、飲めるかしら」

 生前の澪は酒を口にしたことがなかった。そう聞いて桐吾は小さなグラスを用意する。

「試してみるといい。苦いのと甘いのと、どっちがいい?」
「甘い……お屠蘇みたいな? それなら舐めるぐらいはしたことあるわ」
「……たぶん違う」

 桐吾はむしろ屠蘇を飲んだことがなかった。フ、と笑ってしまったが、そのやわらかい笑みに澪の気持ちもほぐれる。

「じゃあ甘いのを、試してみます」
「ああ」

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