明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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桜山守向日葵との縁談が壊れたことは、もちろん久世正親の怒りを誘った。桐吾の伯父にして久世建設常務の正親は出社早々の桐吾を役員室に呼びつける。面目丸つぶれの正親の顔は怒りで赤く染まっていた。
「おま、お前と言う奴は……!」
「こちらの瑕疵は認めさせなかったんです。ほめてもらいたいぐらいですね。向日葵さんの方もまともな婚姻関係を結ぶ気がなかったのですから、しょせん無理な話だったんですよ」
桐吾に同棲する相手がおり、向日葵は建前上の夫を望んでいるだけ。そんな二人の事情は双方に暴露した。
外部には漏らさないと取り決めたが、内部的にはそうでもしなきゃおさまりがつかない。見合いをお膳立てた正親と、桜山守の親を黙らせなくてはならないのだ。
「あっちが契約夫婦でと申し出るならお前にも悪い話じゃなかろうが。妾にと言っていたお前の女がほぼ正妻になれる!」
「ほぼ? 普通に正妻にすればいいだけです」
伯父の性根がほとほと嫌で、桐吾は軽蔑の視線を隠さなかった。正親がたじろぐ。
桐吾の整った顔立ちで冷ややかにされると、正親的には怖い。本気で怖いのだ。せっかく堂々とした椅子に座り身長差をごまかしているのに台無しだった。机を挟んで立っている桐吾は機械的に告げた。
「向日葵さんからは久世建設との合弁事業に前向きだとの言葉を引き出してあります。SAKURAホールディングスに食い込むという役目は果たしましたので問題ありませんね。では、通常業務に戻らせていただきます」
一礼して出ていく桐吾を見送って、正親はギリギリと歯がみした。
桜山守向日葵との縁談が壊れたことは、もちろん久世正親の怒りを誘った。桐吾の伯父にして久世建設常務の正親は出社早々の桐吾を役員室に呼びつける。面目丸つぶれの正親の顔は怒りで赤く染まっていた。
「おま、お前と言う奴は……!」
「こちらの瑕疵は認めさせなかったんです。ほめてもらいたいぐらいですね。向日葵さんの方もまともな婚姻関係を結ぶ気がなかったのですから、しょせん無理な話だったんですよ」
桐吾に同棲する相手がおり、向日葵は建前上の夫を望んでいるだけ。そんな二人の事情は双方に暴露した。
外部には漏らさないと取り決めたが、内部的にはそうでもしなきゃおさまりがつかない。見合いをお膳立てた正親と、桜山守の親を黙らせなくてはならないのだ。
「あっちが契約夫婦でと申し出るならお前にも悪い話じゃなかろうが。妾にと言っていたお前の女がほぼ正妻になれる!」
「ほぼ? 普通に正妻にすればいいだけです」
伯父の性根がほとほと嫌で、桐吾は軽蔑の視線を隠さなかった。正親がたじろぐ。
桐吾の整った顔立ちで冷ややかにされると、正親的には怖い。本気で怖いのだ。せっかく堂々とした椅子に座り身長差をごまかしているのに台無しだった。机を挟んで立っている桐吾は機械的に告げた。
「向日葵さんからは久世建設との合弁事業に前向きだとの言葉を引き出してあります。SAKURAホールディングスに食い込むという役目は果たしましたので問題ありませんね。では、通常業務に戻らせていただきます」
一礼して出ていく桐吾を見送って、正親はギリギリと歯がみした。