あやまちは、あなたの腕の中で〜お見合い相手と結婚したくないので、純潔はあなたに捧げます〜
 ひなは、大奥様である清栄と慶一郎に挨拶を済ませると、さっそく庭の一角に小さな薬草園を作り始めた。
 選んだのは、南東に面した場所。午前中だけやわらかな日差しが差し込み、午後になると自然と木陰ができる。
 清栄が手ずから育てているつつじの木からも少し離れていて、もともとは雑草ばかりが伸び放題になっていた、ぽつんと空いた一角だった。

 庭そのものは、ある程度手入れされてはいるものの、専属の庭師がいるわけではない。
 主に女中たちが、手が空いたときに草を抜いたり、季節の花を植え替えたりしているらしい。
 たまに、清栄が気まぐれに球根を植えることもあるのだと聞いた。

 物置の使用許可も、あらかじめ貰っておいた。古びた木戸を開けると、中には鍬や鋏のほか、鉢植えや竹籠、干し網のようなものまで整然と並んでいた。風通しの良いその空間は、工夫しだいで調合や乾燥の作業にも充分使えそうだった。

 木枠で囲んだ細長い花壇を、物置から持ってきた鍬で土を掘り返す。
 庭の隅に放置されていた腐葉土を混ぜて、ふかふかの黒土に整える。

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