あやまちは、あなたの腕の中で〜お見合い相手と結婚したくないので、純潔はあなたに捧げます〜
 ひながとりわけ気を配ったのは、以前の長屋から鉢ごと持ってきた青蓮草(セイレンソウ)だった。
 青蓮草は鎮静作用のある希少な薬草で、育てるのが難しい。
 直射日光に弱く、ちょっとした湿度の変化でもすぐに葉が枯れてしまう。
 早乙女家までの道のりも、この薬草の状態を気にしながら馬車に乗ってきた。

 その青蓮草を花壇に三つ植え変え、手製の木箱で覆いをする。木箱の片面は開閉できるようになっており、日光や風の具合に合わせて少しずつ調節できる。早朝と夕刻に葉の色を確認し、水分を霧吹きで与えるのも欠かさない。
 他の薬草たちは、ひとまず庭に咲いているもので充分だろう。
 
「ここで、ちゃんと育ってくれますように……」

 土の匂いに包まれながら、ひなは掌を合わせてそっと願う。
 その姿を、縁側に面した書斎から、慶一郎が静かに見ていたことに、ひなはまだ気づいていなかった。

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