あやまちは、あなたの腕の中で〜お見合い相手と結婚したくないので、純潔はあなたに捧げます〜
 奥座敷を後にしたひなは、庭の方へと視線をやった。
 庭に咲く花たちは、今日も静かに陽の光を浴びている。
 風に揺れながらも、どれも凛として美しい。
 花はいい。咲くことに迷わず、役目を果たすようにそこにある。
 人の手で摘まれ、薬となり、誰かの痛みを和らげる。あるいは鳥や虫の命を支える。
 ただそこに咲くだけで、誰かの役に立っている。
 ひなも、そうありたいと願ってきた。人の痛みに寄り添える薬師として生きていけたらと。

(……篠宮家に嫁ぐことが、早乙女家の役に立つのなら)

 思いかけて、ひなはきゅっと唇を引き結んだ。
 それもまた誰かのためになる道なのだと、自分に言い聞かせるように。
 深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
 それからひなは、顔を上げてふたたび女中としての仕事に戻っていった。
 胸の奥に、ひとしずくの違和感を残したまま──。

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