双子パパになった不屈の自衛官は飽くなき愛で純真ママを取り戻す
「せっかくのクリスマスの夜だから、良かったら飲みません?」
革張りのメニューを開いた砂羽さんが訊く。
「え、でも、砂羽さんが飲まないなら私は」
「車は、明日取りに来ればいいかなって思い始めてます。タクシーでお送りします」
砂羽さんは「今更ですけど」とふっと自嘲的な笑みをこぼした。
「なので、希穂さんも良かったら」
「それなら、せっかくなので」
メニューを差し出されて、アルコールメニューを眺める。目に付いたカシスソーダに決め、砂羽さんに伝えた。
砂羽さんはやってきたスタッフにカシスソーダと、聞いたことのないお酒を頼んでいる。
間もなく運ばれてきたのは、背の高い細いグラスに入った二層になっているカシスソーダと、大きな丸い氷が入った背の低いグラス。中には三分の一ほどの高さまでブランデーかウィスキーのようなお酒が入っていた。
互いにグラスを取り、「乾杯」と音が立たない程度に軽くグラスを触れ合わせる。
軽くマドラーで混ぜて口に運ぶと、甘く、でもどこか少しだけ苦みも感じる炭酸が口内に広がった。
心地のいい沈黙が落ち、ふたりの間には店内での演奏が流れていく。
「今日は、ありがとうございました。一緒に過ごせて、いいクリスマスになりました」
切り出したのは砂羽さんのほうで、となりに顔を向ける。
グラスの中の大きな氷を回し、そっと口をつけていた。
「それは、私こそです。また、あっという間の時間でした」