組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
「芽生、お前に触れてるのは誰だ?」
 耳元で囁かれたその声に、芽生は「京ちゃん……」と小声で答える。
「ああ、そうだ……俺だ」
 だから大丈夫だと言外に含めて、京介が続ける。
「芽生、お前にだけは俺、京介って呼ばれてぇんだけど?」
 まるでそうされることで自分の名が〝相良(さがら)京介(きょうすけ)〟なのだと確認したいみたいにも取れる京介の口ぶりに、そう言えばそうお願いされていたんだった。そう思いながら芽生が「京介……」とつぶやいたと同時、芽生の下腹部の敏感な突起に、京介の指先が触れた。
「やっ……」
 思わず声を上げてギュッと身体を縮こまらせた芽生に、
「芽生。力、抜こう。――な?」
 京介が空いた方の手で芽生の頭を優しく撫でてくれるから、芽生は懸命にリラックスしようと藻掻いた。
 でも、今から訪れるであろうことを考えてしまうと、どうしても上手く力が抜けなくて……涙目で京介を見上げる。
 京介はそんな芽生に優しく口づけを落とすと、キスに集中してふっと芽生の身体から力が抜けた瞬間を見計らったように芽生自身が吐き出したぬめりを指先に纏わせて亀裂に沿って指を前後させた。
 くすぐったいような、でも妙に落ち着かない感覚に見舞われた芽生が、身体をもじもじと揺らせるのをじっと観察しながら、京介が手指の動きに強弱を加える。
 京介の指は、ゆっくりと準備を整えるように優しく、何度も何度も芽生の秘所を撫でて……やがてタイミングを見計らったように固く閉ざされた隘路(あいろ)につぷっと指を入れてきた。
「んっ……!」
 突如襲ってきた一際強い違和感に、芽生が呼吸を浅くして眉根を寄せる。
 痛みはほとんどないのに、頭の奥底に浸透した〝知識〟が〝痛いかもしれない〟と訴えてくるのだ。――そんな不安が、どうしても頭を離れなくて、京介の指先が気遣わし気に芽生の入り口を慣らすように動かされるたび、身体にギュウッと力がこもってしまう。
「芽生。お前の中に入ってんのは俺の指だ」
 京介にそっと告げられて、芽生が恐る恐る京介を見つめたら、「俺が今までお前を傷付けたこと、あるか?」と問い掛けられて、芽生はフルフルと首を横に振った。
「今回も大丈夫だ。俺を信じろ」
 京介の言葉に芽生はそっと力を抜いた。
「いい子だ」
 京介に褒められると、ほわりと幸せな気持ちが身体の奥底から溢れてくる。
 子供の頃から慣れ親しんだ習慣のような感覚に、芽生がトロリと意識を溶かしていく。
「……怖くなったら、すぐ言え」
 京介の優しい声音だけが、芽生の心のよりどころの全てだった。

 どのくらい長いこと京介に入り口をほぐされていたのか、芽生には分からない。
 分からないけれど、京介に長い時間かけて愛撫されたそこは、じんとした熱を持ってほんのちょっとの刺激にですらピクッと反応してしまうくらい敏感になっていた。
 やがて、京介の身体がそっと重なって……。
 芽生の脚の間に、熱を持った彼のそれが当たっているのを自覚した芽生は、その熱さにビクッと肩を跳ねさせた。

「芽生……挿入(いれ)るぞ」
 京介の宣言に、芽生は一度大きく息を吸って、それからゆっくりと息を吐き出すと、
「……うん」
 小さく答えて、コクッと首肯した。

 ほんのわずか、京介が動いて……京介の熱い昂りが隘路(あいろ)をこじ開けて入ってきた瞬間、芽生の瞳が見開かれる。
「……っ、あ……!」
 激痛……というほど強くはないけれど、明らかに指とは質量の違うそれに、鈍い痛みがピリピリと走るようで、芽生は思わず腰を引きそうになった。
 けれど京介がすぐに動きを止め、芽生の手を強く握ってくれるから……芽生はその手を握り返す。
「……痛いか?」
 掠れた声で尋ねてくる京介の顔は、芽生以上に不安そうだった。
 それが可笑しくて、でも嬉しくて――芽生はこくんと小さく頷いたあと、しっかりとした声音で答える。
「少しだけ。……でも、思ったほど痛くない。……京……介が沢山ほぐしてくれたから……大丈夫。それより……私、今凄く凄く幸せだよ?」

 ニコッと微笑んで告げられた芽生の言葉に、京介の目が僅かに潤んだように見えた。

 その後、芽生の反応を探るみたいに何度も何度も動きを止めながら、京介はとてもゆっくりと芽生の奥へと進んでいった。

 痛みは確かにあった。あったけれど、すぐそばに京介の声があって、手があって、温もりがあって――。芽生はとにかく「愛されている」と感じさせられて、幸せだった。
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