組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
 やがて痛みの波が少しずつ緩み、息の仕方も変わってくる。
 腹の奥底から込み上げてくるなにかに、芽生の唇から熱い吐息が漏れた。

「……あ、んっ。京ちゃ、気持ち、いっ……」
「……ああ、芽生。俺も、だっ」
 芽生の言葉に京介も荒い息を吐きながら同意すると、我慢出来ないみたいに芽生の額へ口づける。
「京、介っ」
 芽生の悲鳴に似た声とともに、京介も薄い皮膜越しに芽生の中へ精を放った――。


***


 どうやら芽生(めい)は意識を手放してしまっていたらしい。
 心地よい水音に意識を浮上させると、温かな湯船の中で京介に横抱きで抱き抱えられていた。
 まだぼんやりした意識ではイマイチ現状が掴めなくてトロンとした目で京介を見上げたら、ホッとしたように京介が芽生の身体を労わってくる。
「……すまねぇな、芽生。どこも痛くねぇか?」
 それが行為後のダメージのことを指しているんだと気が付いた芽生は、浴室内の明るさに今更のように気が付いて、慌てて胸元を隠した。パシャリとお湯が跳ねて、ふたりの顔を濡らす。
「こら、急に動くな……」
 芽生が湯船に沈まないよう気遣ってくれたんだろう。京介の腕に力が込められて、それがより一層芽生の羞恥心(しゅうちしん)を煽ってくる。
「あ、あのっ、……京ちゃん……私っ」
「京介」
 浴室を出たいと告げたかったのだけれど、すぐさま京介に呼び名を訂正されて、芽生はオロオロと視線を彷徨わせた。
「で、身体は大丈夫か? 痛いところとかねぇか?」
 間髪入れず、再度芽生の体調(コンディション)を問い掛けてきた京介に、芽生は裸で京介とこんな明るいお風呂場にいることにドギマギしつつも何とか答える。
「大……丈、夫」
 ちょっと下腹部の辺りに違和感はあるけれど、動けないほどじゃない。
 胸元を隠しながらしどろもどろに返答したら、京介が
「……ごめんな。ホントは微塵も痛くさせるつもりも、無理させるつもりもなかったんだが……俺もまだまだみてぇだ。――なんか……バカみてぇに歯止めがきかなくなっちまった」
 と申し訳なさそうな顔をする。
「……え?」
 芽生が顔を上げようとすると、京介は自分の表情を見られたくないみたいに芽生の頭をギュッと抱え込んだ。
「お前が……相手だったからな」
 ぼそりと落とされた言葉が嬉しくて、芽生は京介に申し訳なく思われていることを払拭したくなった。
 ぼそりと落とされた言葉が嬉しくて、芽生は京介に申し訳なく思われていることを払拭したくなった。
「な、慣れないことばかりでびっくりしたけど……でも……私、初めてだったのにすごく気持ちよくて……頭がぼんやりしちゃったの。だから、だよ?」
 気を失ってしまったのはそのせいだと言外に含めたら、にわかに恥ずかくて堪らなくなった。
 でも、そんな芽生の言葉に京介が「そうか」と嬉しげにつぶやいて彼女の額に何度目になるか分からないキスを落としてくれて……芽生は伝えられて良かったとじんわりと心の中が温かくなる。

 芽生が気を失っている間に身体を洗われたのか、芽生の身体から石鹸の香りがふわりと立ち上る。それは背後の京介も同じみたいで――。
 その時の状況を考えるとあまりにも恥ずかしくなって、芽生は諸々をシャットアウトしたいみたいに京介の腕の中で目を閉じた。
 心地よい疲労感と、胸の奥に残るじんわりとした幸福感。ゆらゆらと揺れる心地よいお湯と、じかに触れる京介の肌の感触が、照れくさいけど気持ちいい。
 このまま朝が来なければいいのに――。
 そんなことを思いながら、芽生は背後の京介にそっと身体を預けた。 
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