組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
「言、われた……けどっ! 京ちゃ、が怪我したって聞かされたら、じっとしていられるわけ……ない……じゃない!」
「あ、おいっ、芽生……っ」
ポロポロと涙をこぼしながら訴える芽生を、京介が慌てたようにギュッと抱きしめてきた。そうしてそのまま、「三井……」と低めた声で先ほど労ったばかりの配下の名を呼ぶ。
「はい、何でしょう?」
「こいつ誘い出すのに、俺が怪我したとか嘘ついたのか?」
京介の威圧的な問い掛けに、慌てたように三井とは別の声が被さった。
「お、俺がっ! 独断で嘘つきやした! アニキは知りません!」
京介に抱きしめられている芽生からは見えないけれど、恐らくこの声はマンションに来た木田だろう。
「いや、木田に神田さんの誘い出しを任せたのはわたくしです。……咎は自分にあります」
そんな木田をすぐさま庇う三井の声がして、その雰囲気に我慢出来なくなったのだろう。
「あのっ。カシラ! 姐さんに聞けばわかると思いますが……俺が彼女をぞんざいに扱ったのをアニキが諌めてくれましたっ! だから……三井のアニキは姐さんを傷付けるつもりなんて微塵もなかったんです! 誓いやす!」
恐らく佐山が、言わなくてもいいのに……と言う罪の告白をしてしまう。
「芽生、本当か?」
京介の言葉に、芽生はどう答えたらいいのか分からなくてオロオロと視線を彷徨わせたのだが、どうやらそれを【肯定】と受け止めたらしい。
「何があってもコイツに危害を加えるような真似はすんなって言ってあったよなぁ?」
低められた声に呼応するように、芽生を抱きしめる京介の腕に力が込められる。
今にも佐山に殴り掛かりそうな不穏な空気を感じた芽生は、京介の胸をトントンと叩いた。
その振動に、京介が険しい顔のまま自分の方を見下ろしたと同時、眉根を寄せて言う。
「京ちゃん、そんな顔しちゃ嫌だ」
「芽生……」
「怖かったのは確かだけど……私、怪我とかしてないよ? だから……三人を許してあげて?」
「けどな、芽生。俺たちの世界にゃ、ケジメってぇのが必要なんだよ」
「じゃあ……」
芽生は京介の言葉にちょっとだけ考えてから、「私、『たちばな庵』の塩大福が食べたい!」と頓珍漢なことを言った。
「は? いきなり何だよ子ヤギ」
たちばな庵はこの辺ではちょっと有名な和菓子屋で、中でも今芽生が言った塩大福は人気商品で、昼過ぎには売り切れてしまう。
「みんなで二〇個! ここにいる全員で食べられる数買って来てくれて……ついでに美味しい緑茶も用意してくれたらそれでいいことにしよう? ダメ?」
たちばな庵の塩大福は、一日限定三〇個。それを二〇個も確保しろと言うのは、実は京介にぶん殴られるよりも過酷な条件だということに芽生は気付いていない。
ちなみに相良京介が組長を張っている相良組では、身体を欠損するような行為――指詰めなど――は禁止されている。
「あ、あの……姐さん……俺たちはカシラに気が済むまで殴……」
それで佐山が、思わず「殴られる方がマシ」だと異議を唱えようとしたのをギロリと睨んで黙らせると、京介が訳知り顔でククッと笑った。
「テメェらから酷い目に遭わされたコイツがいいっ言ってんだ。今回の件はそれで和解成立にしてやるよ。みんなもそれでいいよなぁ?」
京介の言葉に、あちこちから「構いません」とか「はい!」とか「塩大福楽しみです!」とか肯定の声が上がって、芽生はホッと胸を撫で下ろした。
「あ、おいっ、芽生……っ」
ポロポロと涙をこぼしながら訴える芽生を、京介が慌てたようにギュッと抱きしめてきた。そうしてそのまま、「三井……」と低めた声で先ほど労ったばかりの配下の名を呼ぶ。
「はい、何でしょう?」
「こいつ誘い出すのに、俺が怪我したとか嘘ついたのか?」
京介の威圧的な問い掛けに、慌てたように三井とは別の声が被さった。
「お、俺がっ! 独断で嘘つきやした! アニキは知りません!」
京介に抱きしめられている芽生からは見えないけれど、恐らくこの声はマンションに来た木田だろう。
「いや、木田に神田さんの誘い出しを任せたのはわたくしです。……咎は自分にあります」
そんな木田をすぐさま庇う三井の声がして、その雰囲気に我慢出来なくなったのだろう。
「あのっ。カシラ! 姐さんに聞けばわかると思いますが……俺が彼女をぞんざいに扱ったのをアニキが諌めてくれましたっ! だから……三井のアニキは姐さんを傷付けるつもりなんて微塵もなかったんです! 誓いやす!」
恐らく佐山が、言わなくてもいいのに……と言う罪の告白をしてしまう。
「芽生、本当か?」
京介の言葉に、芽生はどう答えたらいいのか分からなくてオロオロと視線を彷徨わせたのだが、どうやらそれを【肯定】と受け止めたらしい。
「何があってもコイツに危害を加えるような真似はすんなって言ってあったよなぁ?」
低められた声に呼応するように、芽生を抱きしめる京介の腕に力が込められる。
今にも佐山に殴り掛かりそうな不穏な空気を感じた芽生は、京介の胸をトントンと叩いた。
その振動に、京介が険しい顔のまま自分の方を見下ろしたと同時、眉根を寄せて言う。
「京ちゃん、そんな顔しちゃ嫌だ」
「芽生……」
「怖かったのは確かだけど……私、怪我とかしてないよ? だから……三人を許してあげて?」
「けどな、芽生。俺たちの世界にゃ、ケジメってぇのが必要なんだよ」
「じゃあ……」
芽生は京介の言葉にちょっとだけ考えてから、「私、『たちばな庵』の塩大福が食べたい!」と頓珍漢なことを言った。
「は? いきなり何だよ子ヤギ」
たちばな庵はこの辺ではちょっと有名な和菓子屋で、中でも今芽生が言った塩大福は人気商品で、昼過ぎには売り切れてしまう。
「みんなで二〇個! ここにいる全員で食べられる数買って来てくれて……ついでに美味しい緑茶も用意してくれたらそれでいいことにしよう? ダメ?」
たちばな庵の塩大福は、一日限定三〇個。それを二〇個も確保しろと言うのは、実は京介にぶん殴られるよりも過酷な条件だということに芽生は気付いていない。
ちなみに相良京介が組長を張っている相良組では、身体を欠損するような行為――指詰めなど――は禁止されている。
「あ、あの……姐さん……俺たちはカシラに気が済むまで殴……」
それで佐山が、思わず「殴られる方がマシ」だと異議を唱えようとしたのをギロリと睨んで黙らせると、京介が訳知り顔でククッと笑った。
「テメェらから酷い目に遭わされたコイツがいいっ言ってんだ。今回の件はそれで和解成立にしてやるよ。みんなもそれでいいよなぁ?」
京介の言葉に、あちこちから「構いません」とか「はい!」とか「塩大福楽しみです!」とか肯定の声が上がって、芽生はホッと胸を撫で下ろした。