組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
16.総入れ替えの勧め
結局佐山文至は芽生の世話係から外されたらしい。あれだけ色々あったのだから当然と言えば当然なのだけれど、京介からそう聞かされた芽生は色々と落ち着かない。
何故なら、そのせいで自分の送り迎えを当面は京介が担うと言い出したからだ。
(京ちゃん、昨日の今日で私、さすがにあなたのことを意識しまくりなんだけど!)
あんなスケスケの下着姿を大好きな人にさらしてしまったのだ。芽生はソワソワと落ち着かない気持ちでお風呂から上がったというのに、京介は余りにも《《いつも通り》》で。
ひとり緊張しまくった芽生は、結果的に京介の手のひらの火傷の手当てもし損ねて、自分の不甲斐なさに腹が立った。
(考えてみたら京ちゃんが気にしてないみたいなのに、私だけ意識してるのって恥ずかしいよね?)
もしかしたら京介が自分に欲情してくれたと感じたこと自体気のせいだったのかも知れない。
そう思い至った芽生は、一晩寝て、あのことはなかったことにしようと心に誓った。
マンションのエレベーター内。昨夜の恥ずかしい件は意識しないと決心してみたものの、こんな狭い空間で京介と二人きりはさすがに緊張して間が持たない。
「京ちゃん、ブン……」
階下へ向かう階数表示から視線を外し、京介の様子を気にしながら口を開いた芽生は、無意識にブンブンと言い掛けて京介に睨まれてしまう。
「えっと……佐、山さん? はどうなったの? 酷い目に遭わせたり……してない?」
気がそぞろだったとはいえ自分の迂闊さを呪いつつ、慌てて佐山さんと言い換えた芽生だったけれど、慣れない呼び方はやはり落ち着かない。
今朝、朝食の時に京介から「佐山の後任が決まるまでは俺が送り迎えしてやる」と言われたときには嬉しかったのと同時、佐山は無事なの? と気になってしまった。下手に彼のことを口にすれば、京介の機嫌を損ねることは学習済み。聞くべきではないと分かっていたくせに、どうしてもそこだけは確認せずにはいられなかった。
恐る恐る京介の顔色を窺えば、「ああ、お前と約束したからな」と吐息を落とされた。
「約束?」
「お前が俺の言うことを聞いたら、佐山にゃ厳重注意だけにしてやるっ言ったろ」
「でも……」
京介はそう言ってくれたけれど、考えてみれば芽生は彼の指示通り真っ裸になったわけじゃない。
「とりあえず三日。自宅謹慎にするだけで済ませたから安心しろ」
「あの……。私、ちゃんと出来なかった、よね? なのに……よかったの?」
「なんだ、契約不履行で厳罰に処したほうが良かったか?」
不機嫌そうに告げられた京介の言葉に、ふるふると首を振ると、芽生は「京ちゃん、有難う!」とすぐ隣に立つ京介へギュッと抱き付いた。
機嫌は良くなさそうだけれど、京介は今日もとことん芽生に甘い。それが嬉しくてたまらなかったのだ。
「お、おいっ。芽生……」
恥じらいを持て、とか何とか京介が言っているけれど、お構いなし。芽生は京介にしがみついたまま言葉を紡いだ。
「私のせいで誰かが辛い思いをするのはイヤだったから、すごく嬉しい!」
京介の顔を見上げてニコッと笑ったら、「揚げ足を取るようで悪んだがな、俺は今、《《お前のせいで非常にしんどい思いをさせられてる》》んだが?」と視線を逸らされてしまう。
「えっ!? ごめん! もしかして……痛かった?」
京介の言葉に、(抱き付く力が強すぎたかな?)と反省した芽生は、すぐさま腕の力を緩めた。なのに何だか京介の態度がぎこちなく思えるのは気のせいだろうか?
「あ、あのね、京ちゃん、昨夜ってもしかして私に……」
――反応してくれた?
芽生がソワソワしながらそう問い掛けようとした矢先、京介がそっぽを向いたまま言う。
「芽生。今日はお前の下着、《《買い替え》》に行くぞ」
「え?」
確か京介は今日の予定を全てキャンセルしていたけれど、芽生は普通に仕事だ。今のお誘いは終業後、と言う認識で合っているだろうか?
それに、そもそも京介から買い与えられている下着は全部で六セットもあるのだ。どれも肌触りが良いレース素材の上質な物ばかりで、着用を始めてそれほど経っていないから、傷んだりもしていない。
「京ちゃん、私、一人しかいないよ?」
「は? お前みてぇーなのが何人もいて堪るかよ」
「もぅ! そんなに下着があっても困るって意味!」
ふと、京介が下着は一度履いたら捨てて新しいものを着用していたのを思い出した芽生は、「私、ちゃんと手洗いして丁寧に扱ってるよ?」と言ってみた。
「んな事は分かってるわ」
「だったら、どうして?」
何故なら、そのせいで自分の送り迎えを当面は京介が担うと言い出したからだ。
(京ちゃん、昨日の今日で私、さすがにあなたのことを意識しまくりなんだけど!)
あんなスケスケの下着姿を大好きな人にさらしてしまったのだ。芽生はソワソワと落ち着かない気持ちでお風呂から上がったというのに、京介は余りにも《《いつも通り》》で。
ひとり緊張しまくった芽生は、結果的に京介の手のひらの火傷の手当てもし損ねて、自分の不甲斐なさに腹が立った。
(考えてみたら京ちゃんが気にしてないみたいなのに、私だけ意識してるのって恥ずかしいよね?)
もしかしたら京介が自分に欲情してくれたと感じたこと自体気のせいだったのかも知れない。
そう思い至った芽生は、一晩寝て、あのことはなかったことにしようと心に誓った。
マンションのエレベーター内。昨夜の恥ずかしい件は意識しないと決心してみたものの、こんな狭い空間で京介と二人きりはさすがに緊張して間が持たない。
「京ちゃん、ブン……」
階下へ向かう階数表示から視線を外し、京介の様子を気にしながら口を開いた芽生は、無意識にブンブンと言い掛けて京介に睨まれてしまう。
「えっと……佐、山さん? はどうなったの? 酷い目に遭わせたり……してない?」
気がそぞろだったとはいえ自分の迂闊さを呪いつつ、慌てて佐山さんと言い換えた芽生だったけれど、慣れない呼び方はやはり落ち着かない。
今朝、朝食の時に京介から「佐山の後任が決まるまでは俺が送り迎えしてやる」と言われたときには嬉しかったのと同時、佐山は無事なの? と気になってしまった。下手に彼のことを口にすれば、京介の機嫌を損ねることは学習済み。聞くべきではないと分かっていたくせに、どうしてもそこだけは確認せずにはいられなかった。
恐る恐る京介の顔色を窺えば、「ああ、お前と約束したからな」と吐息を落とされた。
「約束?」
「お前が俺の言うことを聞いたら、佐山にゃ厳重注意だけにしてやるっ言ったろ」
「でも……」
京介はそう言ってくれたけれど、考えてみれば芽生は彼の指示通り真っ裸になったわけじゃない。
「とりあえず三日。自宅謹慎にするだけで済ませたから安心しろ」
「あの……。私、ちゃんと出来なかった、よね? なのに……よかったの?」
「なんだ、契約不履行で厳罰に処したほうが良かったか?」
不機嫌そうに告げられた京介の言葉に、ふるふると首を振ると、芽生は「京ちゃん、有難う!」とすぐ隣に立つ京介へギュッと抱き付いた。
機嫌は良くなさそうだけれど、京介は今日もとことん芽生に甘い。それが嬉しくてたまらなかったのだ。
「お、おいっ。芽生……」
恥じらいを持て、とか何とか京介が言っているけれど、お構いなし。芽生は京介にしがみついたまま言葉を紡いだ。
「私のせいで誰かが辛い思いをするのはイヤだったから、すごく嬉しい!」
京介の顔を見上げてニコッと笑ったら、「揚げ足を取るようで悪んだがな、俺は今、《《お前のせいで非常にしんどい思いをさせられてる》》んだが?」と視線を逸らされてしまう。
「えっ!? ごめん! もしかして……痛かった?」
京介の言葉に、(抱き付く力が強すぎたかな?)と反省した芽生は、すぐさま腕の力を緩めた。なのに何だか京介の態度がぎこちなく思えるのは気のせいだろうか?
「あ、あのね、京ちゃん、昨夜ってもしかして私に……」
――反応してくれた?
芽生がソワソワしながらそう問い掛けようとした矢先、京介がそっぽを向いたまま言う。
「芽生。今日はお前の下着、《《買い替え》》に行くぞ」
「え?」
確か京介は今日の予定を全てキャンセルしていたけれど、芽生は普通に仕事だ。今のお誘いは終業後、と言う認識で合っているだろうか?
それに、そもそも京介から買い与えられている下着は全部で六セットもあるのだ。どれも肌触りが良いレース素材の上質な物ばかりで、着用を始めてそれほど経っていないから、傷んだりもしていない。
「京ちゃん、私、一人しかいないよ?」
「は? お前みてぇーなのが何人もいて堪るかよ」
「もぅ! そんなに下着があっても困るって意味!」
ふと、京介が下着は一度履いたら捨てて新しいものを着用していたのを思い出した芽生は、「私、ちゃんと手洗いして丁寧に扱ってるよ?」と言ってみた。
「んな事は分かってるわ」
「だったら、どうして?」