組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
「勘違いすんな。別に芽生は俺の、ってわけじゃねぇよ」
「あ、あのっ、その話はもう……」
慌てる余り、つい後先考えずに割り込むように声を出してしまった芽生だったのだけれど、京介は芽生を無視をして続けるのだ。
「うちは知っての通り男所帯だ。佐山外したところでこれはって代わりがおいそれとは確保出来なかったから仕方なく――」
「組長の《《お前が直々に》》送り迎えってわけか。献身的なことで」
クスクス笑う長谷川社長に、京介が明らかにムスッとして、それに気付いた静月が慌てたように「将継さんっ!」と止めに入ってくれたのだけれど。
「なぁ相良よ。いい加減いろいろ認めて楽になれ」
長谷川社長は不貞腐れた京介の姿なんて慣れたものなのか、全く意に介した風もなくそう続けた。
「要らん世話だ」
結局そんな長谷川社長には京介も敵わないのか、ぼそりと吐き捨てるなり芽生にチラリと視線を投げかけて吐息を落とした。
(京ちゃん、なんで私を見て溜め息?)
なんだか自分が、物凄く問題児になった気がした芽生である。
長谷川社長は何か京介から相談をされていたから、あんなよく分からないアドバイスをしたんだろうか?
芽生は居心地の悪さを感じながら、そう思った。
「――ま、余談はさておきこっからが本題なんだがな、長谷川」
寸の間沈黙が続いたあと、京介が気を取り直したように口を開く。
「今日はこいつ、休ませていい?」
芽生をビシッと指さして、いきなりそんなことを言ってくる京介に、芽生は訳が分からない。
「あ、あのっ、京ちゃん!?」
芽生が呼びかけた途端、京介にジロリと睨まれて、「お前の意見は聞いてねぇから」と線引きされてしまう。
「言い方!」
すぐさま長谷川社長が芽生を擁護してくれたけど、京介はそっぽを向いたままだ。
(京ちゃん、子どもっぽい!)
面と向かって言えばややこしくなりそうだったので、芽生は心の中で京介に毒吐く。
「――で、どうなんだよ」
京介は、あくまでも可不可のみが知りたいらしい。
「え? ああ、それは……まぁ私としては別に構わないよ」
「ごめんね神田さん」と小声で付け加えながら長谷川社長が言って、静月が「僕、神田さんの分まで頑張りますね」と後押しをしてくれる。
さすがにここまでされて、『嫌です』とは言えなかった芽生である。
それに――。
そもそも過程はどうあれこれは、
(京ちゃんとデートだぁ♪)
断る理由なんてなかい。
***
「買い物するならワオンモールがいいな?」
急に仕事を休ませられたのだ。そのぐらいはワガママを聞いて欲しい。
予め京介からそう命じられていたのか、長谷川建設敷地内で待機していた黒塗り高級セダンに乗り込むなり、芽生は思い切って口を開いた。
「けど下着は俺の――」
「行きつけのお店に行きたいのかも知れないけど、今回は私も譲れない!」
芽生は昨日サービスカウンターへ預けっ放しになっているネクタイを何としても回収したいのだ。
「実は私ね、昨日……」
言い掛けた途端「昨日?」とドスの利いた声で京介に睨まれて、芽生は残念だけどサプライズは諦めた。
「京ちゃん用にクリスマスプレゼントを買ったの。それ、ラッピングしてもらいたくてサービスカウンターに預けてたのに、色々あって受け取り損ねてるから取りに行きたい」
吐息を落としてそう告げた途端、京介が「俺用?」と小さくつぶやいて芽生をじっと見つめてきた。
「佐山のじゃなく?」
聞かれて、「なんでそうなるの?」と吐息を落としたら「マジか……」と頭を抱えられた。
だから昨夜から色々勘違いしてるよ? って言ってるのに、という言葉を、芽生は何となく飲み込んだ。
「あ、あのっ、その話はもう……」
慌てる余り、つい後先考えずに割り込むように声を出してしまった芽生だったのだけれど、京介は芽生を無視をして続けるのだ。
「うちは知っての通り男所帯だ。佐山外したところでこれはって代わりがおいそれとは確保出来なかったから仕方なく――」
「組長の《《お前が直々に》》送り迎えってわけか。献身的なことで」
クスクス笑う長谷川社長に、京介が明らかにムスッとして、それに気付いた静月が慌てたように「将継さんっ!」と止めに入ってくれたのだけれど。
「なぁ相良よ。いい加減いろいろ認めて楽になれ」
長谷川社長は不貞腐れた京介の姿なんて慣れたものなのか、全く意に介した風もなくそう続けた。
「要らん世話だ」
結局そんな長谷川社長には京介も敵わないのか、ぼそりと吐き捨てるなり芽生にチラリと視線を投げかけて吐息を落とした。
(京ちゃん、なんで私を見て溜め息?)
なんだか自分が、物凄く問題児になった気がした芽生である。
長谷川社長は何か京介から相談をされていたから、あんなよく分からないアドバイスをしたんだろうか?
芽生は居心地の悪さを感じながら、そう思った。
「――ま、余談はさておきこっからが本題なんだがな、長谷川」
寸の間沈黙が続いたあと、京介が気を取り直したように口を開く。
「今日はこいつ、休ませていい?」
芽生をビシッと指さして、いきなりそんなことを言ってくる京介に、芽生は訳が分からない。
「あ、あのっ、京ちゃん!?」
芽生が呼びかけた途端、京介にジロリと睨まれて、「お前の意見は聞いてねぇから」と線引きされてしまう。
「言い方!」
すぐさま長谷川社長が芽生を擁護してくれたけど、京介はそっぽを向いたままだ。
(京ちゃん、子どもっぽい!)
面と向かって言えばややこしくなりそうだったので、芽生は心の中で京介に毒吐く。
「――で、どうなんだよ」
京介は、あくまでも可不可のみが知りたいらしい。
「え? ああ、それは……まぁ私としては別に構わないよ」
「ごめんね神田さん」と小声で付け加えながら長谷川社長が言って、静月が「僕、神田さんの分まで頑張りますね」と後押しをしてくれる。
さすがにここまでされて、『嫌です』とは言えなかった芽生である。
それに――。
そもそも過程はどうあれこれは、
(京ちゃんとデートだぁ♪)
断る理由なんてなかい。
***
「買い物するならワオンモールがいいな?」
急に仕事を休ませられたのだ。そのぐらいはワガママを聞いて欲しい。
予め京介からそう命じられていたのか、長谷川建設敷地内で待機していた黒塗り高級セダンに乗り込むなり、芽生は思い切って口を開いた。
「けど下着は俺の――」
「行きつけのお店に行きたいのかも知れないけど、今回は私も譲れない!」
芽生は昨日サービスカウンターへ預けっ放しになっているネクタイを何としても回収したいのだ。
「実は私ね、昨日……」
言い掛けた途端「昨日?」とドスの利いた声で京介に睨まれて、芽生は残念だけどサプライズは諦めた。
「京ちゃん用にクリスマスプレゼントを買ったの。それ、ラッピングしてもらいたくてサービスカウンターに預けてたのに、色々あって受け取り損ねてるから取りに行きたい」
吐息を落としてそう告げた途端、京介が「俺用?」と小さくつぶやいて芽生をじっと見つめてきた。
「佐山のじゃなく?」
聞かれて、「なんでそうなるの?」と吐息を落としたら「マジか……」と頭を抱えられた。
だから昨夜から色々勘違いしてるよ? って言ってるのに、という言葉を、芽生は何となく飲み込んだ。