組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
17.殿様
京介とともにワオンモールへ着いた芽生は、いの一番にサービスカウンターへ向かった。
「すみません。昨日の夕方なんですけど……」
昨日持ち帰ってしまったプラ製の番号札を恐る恐る女性店員へ差し出せば、ちゃんと取り置きしてあって、無事ラッピング済みのネクタイを受け取ることができた。
店員さんに何度も謝罪した後で取り戻した長細い包みを手に振り返ると、京介と目が合った。
「あ、あの……京ちゃん。これ、渡すのはクリスマスでもいい?」
我ながら間の抜けた質問だと思ってしまった芽生である。
でも、バレてしまったのだから仕方がないと開き直ることにした。
「ああ、構わねぇよ」
いつもなら芽生の荷物をサッと引き取る京介だが、さすがにそれは手を出さない方がいいと思ったらしい。
芽生が袋へ入れられた小箱を大事そうに抱えているのを見て、京介は何も言ってこなかった。
***
「じゃ、次は俺の方の用な? 下着売り場行くぞ」
本当に嘘なんかではなく、そのプレゼントは自分用なのだと芽生から意思表示された京介は、何となく居心地が悪くて……言うなりとっとと踵を返す。
別に怒っているわけではないが、いつもなら芽生の歩く速度に合わせてやれるのに、今日はなんとなくそれすら気恥ずかしい。
「あ、あのっ、京ちゃ、待って」
芽生の声に立ち止まって振り返れば、京介のあとを子犬のように小走りでついてくる芽生の姿が視界に入って、思わず目を覆い隠したくなった。
芽生は、ちっこくて童顔なくせに、胸だけは一丁前にデカい。走るたびにフルフルと揺れる双丘に思わず釘付けになって、京介は慌てて視線を芽生の足元へと移した。
(マジで勘弁してくれ)
昨夜の婀娜っぽい芽生の下着姿を思い出して、危うく股間が反応しそうになった京介は、不愛想な表情のまま芽生の手を握る。
「ホント、お前は鈍臭ぇな」
憎まれ口を叩いていないと要らないことを考えそうで、京介はグッと唇を引き結んだ。
「あ、あのねっ、京ちゃん! ホント、下着は今あるので十分だし、やっぱり買う必要はないと思うの」
京介の手を小さな手でキュッと握りながら、芽生が言ってくる。
「あ? その話はもう終わっただろ」
ぶっきら棒に京介が返したと同時、芽生が立ち止まって、握られた手が軽く後方へ引かれた。
それを不審に思って振り返れば、耳まで真っ赤にして眉根を寄せた芽生と目が合った。
「でも……京ちゃんに下着を選んでもらうとか……考えただけで恥ずかしいんだもん!」
今にも泣きそうな芽生の照れ顔を見た京介は、彼女と一緒に下着売り場へいる自分を想像してにわかに居た堪れない気持ちになってしまう。脳内で、場所を例の行きつけのランジェリーショップへ転換してみても、それは変わらなくて……。
今まで組が管理している店の女の子や、情婦に請われて下着を買いに行った経験は数知れない。わざとらしく恥ずかしがってみせる彼女らに、今芽生が身に着けているのよりもっといやらしい下着を勧めたことだってある。
そもそも京介にとって下着をプレゼントすることは、脱がせることとセットだったから、視覚的な楽しみも重要だったのだ。だが――。
「なぁ芽生。お前、今までもそんなん着けてたのか?」
頑なに今のままでいいと言われて、実は《《そういう下着》》に慣れているのか? と《《なんとなくムカついた》》京介は、よく考えもせずそんなことを聞いてしまった。
途端芽生から「京ちゃんのエッチ!」と反撃されて言葉に詰まる。
「男がスケベで何が悪い」
悔しまぎれにそう言ったら、キョトンとされた。
「ね、京ちゃん。ひょっとして……私にも、《《そういう》》気持ちになってくれたり……する?」
(この娘は、公共の場で何てことを聞いてくんだよ!)
『今まさにヤバかったわ!』という言葉を呑み込んで、『少しは恥じらいを持て!』と言い掛けた京介だったけれど、存外芽生の表情が真剣で、茶化せなかった。
「お前も……《《一応》》女だろうが」
〝一応〟にわざとらしく力を込めたが、『そうなる』と答えたも同然ではないか。苦々しくそんなことを思いながらも、京介はこの話は終わりだとばかりに話題を変える。
「下着は……金渡すから自分で好きなの選べ」
店の前まで付き添いは必要だろうが、案外千崎辺りなら芽生も気負わずにいられるんじゃないだろうか。
芽生に言ったら『異性な時点で一緒!』と怒られてしまうだろうに、そのことに気付けない程度には、京介は《《普通の女の子》》の乙女心に疎かった。
「すみません。昨日の夕方なんですけど……」
昨日持ち帰ってしまったプラ製の番号札を恐る恐る女性店員へ差し出せば、ちゃんと取り置きしてあって、無事ラッピング済みのネクタイを受け取ることができた。
店員さんに何度も謝罪した後で取り戻した長細い包みを手に振り返ると、京介と目が合った。
「あ、あの……京ちゃん。これ、渡すのはクリスマスでもいい?」
我ながら間の抜けた質問だと思ってしまった芽生である。
でも、バレてしまったのだから仕方がないと開き直ることにした。
「ああ、構わねぇよ」
いつもなら芽生の荷物をサッと引き取る京介だが、さすがにそれは手を出さない方がいいと思ったらしい。
芽生が袋へ入れられた小箱を大事そうに抱えているのを見て、京介は何も言ってこなかった。
***
「じゃ、次は俺の方の用な? 下着売り場行くぞ」
本当に嘘なんかではなく、そのプレゼントは自分用なのだと芽生から意思表示された京介は、何となく居心地が悪くて……言うなりとっとと踵を返す。
別に怒っているわけではないが、いつもなら芽生の歩く速度に合わせてやれるのに、今日はなんとなくそれすら気恥ずかしい。
「あ、あのっ、京ちゃ、待って」
芽生の声に立ち止まって振り返れば、京介のあとを子犬のように小走りでついてくる芽生の姿が視界に入って、思わず目を覆い隠したくなった。
芽生は、ちっこくて童顔なくせに、胸だけは一丁前にデカい。走るたびにフルフルと揺れる双丘に思わず釘付けになって、京介は慌てて視線を芽生の足元へと移した。
(マジで勘弁してくれ)
昨夜の婀娜っぽい芽生の下着姿を思い出して、危うく股間が反応しそうになった京介は、不愛想な表情のまま芽生の手を握る。
「ホント、お前は鈍臭ぇな」
憎まれ口を叩いていないと要らないことを考えそうで、京介はグッと唇を引き結んだ。
「あ、あのねっ、京ちゃん! ホント、下着は今あるので十分だし、やっぱり買う必要はないと思うの」
京介の手を小さな手でキュッと握りながら、芽生が言ってくる。
「あ? その話はもう終わっただろ」
ぶっきら棒に京介が返したと同時、芽生が立ち止まって、握られた手が軽く後方へ引かれた。
それを不審に思って振り返れば、耳まで真っ赤にして眉根を寄せた芽生と目が合った。
「でも……京ちゃんに下着を選んでもらうとか……考えただけで恥ずかしいんだもん!」
今にも泣きそうな芽生の照れ顔を見た京介は、彼女と一緒に下着売り場へいる自分を想像してにわかに居た堪れない気持ちになってしまう。脳内で、場所を例の行きつけのランジェリーショップへ転換してみても、それは変わらなくて……。
今まで組が管理している店の女の子や、情婦に請われて下着を買いに行った経験は数知れない。わざとらしく恥ずかしがってみせる彼女らに、今芽生が身に着けているのよりもっといやらしい下着を勧めたことだってある。
そもそも京介にとって下着をプレゼントすることは、脱がせることとセットだったから、視覚的な楽しみも重要だったのだ。だが――。
「なぁ芽生。お前、今までもそんなん着けてたのか?」
頑なに今のままでいいと言われて、実は《《そういう下着》》に慣れているのか? と《《なんとなくムカついた》》京介は、よく考えもせずそんなことを聞いてしまった。
途端芽生から「京ちゃんのエッチ!」と反撃されて言葉に詰まる。
「男がスケベで何が悪い」
悔しまぎれにそう言ったら、キョトンとされた。
「ね、京ちゃん。ひょっとして……私にも、《《そういう》》気持ちになってくれたり……する?」
(この娘は、公共の場で何てことを聞いてくんだよ!)
『今まさにヤバかったわ!』という言葉を呑み込んで、『少しは恥じらいを持て!』と言い掛けた京介だったけれど、存外芽生の表情が真剣で、茶化せなかった。
「お前も……《《一応》》女だろうが」
〝一応〟にわざとらしく力を込めたが、『そうなる』と答えたも同然ではないか。苦々しくそんなことを思いながらも、京介はこの話は終わりだとばかりに話題を変える。
「下着は……金渡すから自分で好きなの選べ」
店の前まで付き添いは必要だろうが、案外千崎辺りなら芽生も気負わずにいられるんじゃないだろうか。
芽生に言ったら『異性な時点で一緒!』と怒られてしまうだろうに、そのことに気付けない程度には、京介は《《普通の女の子》》の乙女心に疎かった。