組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
「こんなに沢山、お部屋に入るかな?」
芽生から京介へのプレゼントはクリスマスまでお預けだが、京介から芽生への贈答品授与は当日まで待つつもりはないらしい。
京介からたんまり冬服とコスメ、それから靴やアクセサリーなどを買い与えられた芽生は、車のトランクルームにぎっしり詰まった贈り物の山を見て困り顔をする。
荷物自体は、後ほど石矢が部屋まで運んでくれるらしい。
毎年のことながら、京介は年に一回の芽生の誕生日をクリスマスとは別、浴びるほどの物品とともにとことん祝ってくれる。いつもなら年に一回だしと思って甘んじて受け入れる芽生なのだが、今年は間借りもしている身。なんだか申し訳なさが先立った。
「お前を甘やかすのは俺の特権だ。文句言わずに受け入れろ」
京介はそう言うけれど、こんなにしてもらったら、芽生から京介へのネクタイなんて塵くらいの価値しかなくなりそうで困る。
京介は「稼ぎが違うんだから気にするな」と言ってくれるけれど、芽生はそんな彼に少し自粛して欲しい。
「お願いだからもう少しクールダウンして?」
そう苦言を呈しながら車を降りた芽生だったのだけれど、マンションの車寄せ近くの植え込み前に段ボール箱があるのが目について話が中断する。近寄ってみれば、中には白黒の子猫がいた。
「京ちゃん」
「あ? 猫か」
痩せこけていて毛もボサボサ。全体的に汚げなその子猫を、芽生は京介が止める隙も与えず何の躊躇いもなく抱き上げた。
「おい、芽生!」
下手に野良に触れれば病気や寄生虫をうつされかねない。怖がる猫に、引っ掻かれたり噛みつかれたりして怪我を負う可能性だってある。
そんな京介の懸念を、全部すっ飛ばした芽生が、泣きそうな顔で京介を見上げてくる。
幸い《《人慣れしている》》のか、猫は芽生の腕の中でおとなしかった。
「京ちゃん、この子」
「あー! んな目で見てくんな! 《《残念ながら》》うちはペット禁止じゃねぇし気になるってんなら」
芽生の視線につい絆されてしまった京介だ。素直じゃない言い方ながらも、飼えないこともないと芽生に告げてしまった。
外は寒い。このままここへ置き去りにすれば、きっとこの小さな生き物は野垂れ死んでしまうだろう。
そう思うと、芽生が抱き上げてしまった手前、もう一度元の場所に戻して放置も寝覚めが悪いと思った。それだけのことだ。
そう自分に言い聞かせている京介は、芽生にとことん甘い。そうしてこういうときにもその甘さを存分に発揮してしまうのだ。
芽生の満面の笑みを見て、どんな高級なプレゼントを渡した時より嬉しそうじゃねぇか、と心の中で吐息を落とした京介は、「行くぞ」と促して子猫を抱いたままの芽生を連れてマンション内へ入る。
その様子を、向かいのビルの物陰から望遠鏡越しにじっと見ている人影があったのだが、猫に気を取られていて二人とも気付けなかった。
***
芽生が連れ帰った白黒の子猫は、頭の上半分と、長い尻尾のみが黒くて、あとは白。ピンと伸ばされた長い尻尾を頭越しに見ると、絶妙に《《ちょんまげ》》っぽく見えて……芽生が「お殿様みたい」とつぶやいたことがきっかけで、「殿様」と命名された。
殿様は、ここへくる前、《《誰かにたらふく何かをもらった》》のか、お腹がぽんぽこりんに膨らんでいた。
そのことが後に災いの種になることを、この時にはまだ、芽生も京介も察知していなかった――。
芽生から京介へのプレゼントはクリスマスまでお預けだが、京介から芽生への贈答品授与は当日まで待つつもりはないらしい。
京介からたんまり冬服とコスメ、それから靴やアクセサリーなどを買い与えられた芽生は、車のトランクルームにぎっしり詰まった贈り物の山を見て困り顔をする。
荷物自体は、後ほど石矢が部屋まで運んでくれるらしい。
毎年のことながら、京介は年に一回の芽生の誕生日をクリスマスとは別、浴びるほどの物品とともにとことん祝ってくれる。いつもなら年に一回だしと思って甘んじて受け入れる芽生なのだが、今年は間借りもしている身。なんだか申し訳なさが先立った。
「お前を甘やかすのは俺の特権だ。文句言わずに受け入れろ」
京介はそう言うけれど、こんなにしてもらったら、芽生から京介へのネクタイなんて塵くらいの価値しかなくなりそうで困る。
京介は「稼ぎが違うんだから気にするな」と言ってくれるけれど、芽生はそんな彼に少し自粛して欲しい。
「お願いだからもう少しクールダウンして?」
そう苦言を呈しながら車を降りた芽生だったのだけれど、マンションの車寄せ近くの植え込み前に段ボール箱があるのが目について話が中断する。近寄ってみれば、中には白黒の子猫がいた。
「京ちゃん」
「あ? 猫か」
痩せこけていて毛もボサボサ。全体的に汚げなその子猫を、芽生は京介が止める隙も与えず何の躊躇いもなく抱き上げた。
「おい、芽生!」
下手に野良に触れれば病気や寄生虫をうつされかねない。怖がる猫に、引っ掻かれたり噛みつかれたりして怪我を負う可能性だってある。
そんな京介の懸念を、全部すっ飛ばした芽生が、泣きそうな顔で京介を見上げてくる。
幸い《《人慣れしている》》のか、猫は芽生の腕の中でおとなしかった。
「京ちゃん、この子」
「あー! んな目で見てくんな! 《《残念ながら》》うちはペット禁止じゃねぇし気になるってんなら」
芽生の視線につい絆されてしまった京介だ。素直じゃない言い方ながらも、飼えないこともないと芽生に告げてしまった。
外は寒い。このままここへ置き去りにすれば、きっとこの小さな生き物は野垂れ死んでしまうだろう。
そう思うと、芽生が抱き上げてしまった手前、もう一度元の場所に戻して放置も寝覚めが悪いと思った。それだけのことだ。
そう自分に言い聞かせている京介は、芽生にとことん甘い。そうしてこういうときにもその甘さを存分に発揮してしまうのだ。
芽生の満面の笑みを見て、どんな高級なプレゼントを渡した時より嬉しそうじゃねぇか、と心の中で吐息を落とした京介は、「行くぞ」と促して子猫を抱いたままの芽生を連れてマンション内へ入る。
その様子を、向かいのビルの物陰から望遠鏡越しにじっと見ている人影があったのだが、猫に気を取られていて二人とも気付けなかった。
***
芽生が連れ帰った白黒の子猫は、頭の上半分と、長い尻尾のみが黒くて、あとは白。ピンと伸ばされた長い尻尾を頭越しに見ると、絶妙に《《ちょんまげ》》っぽく見えて……芽生が「お殿様みたい」とつぶやいたことがきっかけで、「殿様」と命名された。
殿様は、ここへくる前、《《誰かにたらふく何かをもらった》》のか、お腹がぽんぽこりんに膨らんでいた。
そのことが後に災いの種になることを、この時にはまだ、芽生も京介も察知していなかった――。