組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
19.人質
千崎から、相良組が管理しているランジェリーショップ『YURIKA』が燃えていると連絡を受けたのは、芽生とともに子猫を伴って帰宅して間もなくのことだった。
被害に遭った店舗は、芽生に下着を見繕ってもらった馴染みの店で、もっというと千崎が囲っている情婦が経営しているショップでもある。
石矢とともにココアを飲んでいる芽生を気にしつつ、「百合香は?」と低めた声音でオーナーの名を出せば、『腕に少し火傷をしたようですが、無事です』と返る。他のショップ店員たちも大きな怪我などなく逃げおおせたと聞いてホッと肩の力を抜いた京介だ。
にしても――。
「放火か?」
思わず苦々しく吐き出せば、『……のようです』と予想していた通りの答えが返ってきて、つい眉間の皺が深くなった。
そもそもあの店には火元になるようなものがないのだ。
給湯室にあるのは流しと小さな冷蔵庫と急速沸騰機能付きの電気ポット、そしてコーヒーメーカーだけ。
もちろんコンセント差し込み口付近から火花が出ないとも言い切れないが、百合香は綺麗好きな女だ。埃が溜まって云々自体考えにくい。
芽生が住んでいた借家も、放火による火災だと断定されている。その犯人がまだ捕まっていない状態で、またしても不審火が起きたことを、さすがに偶然とは思えなかった。
借家の火災時、一番に細波鳴矢を疑った京介だったが、残念ながらあの男には芽生の家の出火時にアリバイがあって、早々に容疑者リストから外された。だが、今回はどうだろう?
(長谷川建設にも何かないとは言い切れねぇし、警戒を強めるか)
《《芽生を主軸に》》、不審火が起きている気がする。だとしたら友人の会社も危ない気がして、京介は以前芽生を攫って行ったことがある事務所に電話を掛けた。下の者を長谷川建設の警備に付けようと考えたからだ。
だが、何度コールをしても誰も出る気配がない。こんなことはあり得ないことだ。
そのことを不審に思いながらも、京介は仕方なく事務所を任せている三井の携帯を鳴らしたのだが、こちらも応答がない。
(何が起こってる?)
京介は不意に安全なはずの自宅へ残してきた芽生のことが気になった。大丈夫だと思うのに、何故か妙な胸騒ぎを抑えられなくて、気持ちを落ち着けるように煙草を咥えて火をつけると、自宅待機を命じている佐山文至に電話をする。
不本意ではあるが、佐山が芽生を預けるのに一番適任なことは確かだ。
部屋まで上がることは許可せず、マンション外で出入り口を張るように命じた京介だったが、我ながら佐山に対して警戒し過ぎだろと苦笑して、煙草を咥えた口元に力がこもる。
佐山の家から京介のマンションまで車で約三〇分。車自体は芽生の送り迎えに使用していた防弾仕様のミニバンを使うよう指定した。
その電話を切ったと同時、先程は繋がらなかった三井から着信が入る。
被害に遭った店舗は、芽生に下着を見繕ってもらった馴染みの店で、もっというと千崎が囲っている情婦が経営しているショップでもある。
石矢とともにココアを飲んでいる芽生を気にしつつ、「百合香は?」と低めた声音でオーナーの名を出せば、『腕に少し火傷をしたようですが、無事です』と返る。他のショップ店員たちも大きな怪我などなく逃げおおせたと聞いてホッと肩の力を抜いた京介だ。
にしても――。
「放火か?」
思わず苦々しく吐き出せば、『……のようです』と予想していた通りの答えが返ってきて、つい眉間の皺が深くなった。
そもそもあの店には火元になるようなものがないのだ。
給湯室にあるのは流しと小さな冷蔵庫と急速沸騰機能付きの電気ポット、そしてコーヒーメーカーだけ。
もちろんコンセント差し込み口付近から火花が出ないとも言い切れないが、百合香は綺麗好きな女だ。埃が溜まって云々自体考えにくい。
芽生が住んでいた借家も、放火による火災だと断定されている。その犯人がまだ捕まっていない状態で、またしても不審火が起きたことを、さすがに偶然とは思えなかった。
借家の火災時、一番に細波鳴矢を疑った京介だったが、残念ながらあの男には芽生の家の出火時にアリバイがあって、早々に容疑者リストから外された。だが、今回はどうだろう?
(長谷川建設にも何かないとは言い切れねぇし、警戒を強めるか)
《《芽生を主軸に》》、不審火が起きている気がする。だとしたら友人の会社も危ない気がして、京介は以前芽生を攫って行ったことがある事務所に電話を掛けた。下の者を長谷川建設の警備に付けようと考えたからだ。
だが、何度コールをしても誰も出る気配がない。こんなことはあり得ないことだ。
そのことを不審に思いながらも、京介は仕方なく事務所を任せている三井の携帯を鳴らしたのだが、こちらも応答がない。
(何が起こってる?)
京介は不意に安全なはずの自宅へ残してきた芽生のことが気になった。大丈夫だと思うのに、何故か妙な胸騒ぎを抑えられなくて、気持ちを落ち着けるように煙草を咥えて火をつけると、自宅待機を命じている佐山文至に電話をする。
不本意ではあるが、佐山が芽生を預けるのに一番適任なことは確かだ。
部屋まで上がることは許可せず、マンション外で出入り口を張るように命じた京介だったが、我ながら佐山に対して警戒し過ぎだろと苦笑して、煙草を咥えた口元に力がこもる。
佐山の家から京介のマンションまで車で約三〇分。車自体は芽生の送り迎えに使用していた防弾仕様のミニバンを使うよう指定した。
その電話を切ったと同時、先程は繋がらなかった三井から着信が入る。