組長さんと年下彼女~今日から同棲始めます~
いわゆる刺激性下剤の代表格ともいえる、効き目が強めなそれは、飲めば腸の動きを著しく刺激して、腹痛とともに下痢を引き起こさせるしろものだ。
錠剤が多いなか、わざわざ顆粒状のものを用意させたのは、当然牛乳に混ぜ込んで《《無理矢理》》飲ませやすくするために他ならない。
SMなんかで使うような開口器でもあれば尚よかったんだろうが、さすがにそこまでの準備はない。代わりにペットボトルの口を咥えさせて漏斗のようにして流し込む算段だ。
口を開けさせたまま固定出来ないぶん人手は取るが、幸い京介には配下が何人もいる。
「んじゃ、ご馳走タイムといきますか♪」
京介は努めて明るく言い放つと、「やめろぉぉぉ!」と抵抗する鳴矢を手下たちにグッと身動きできないようホールドさせた。元々手枷・足枷はさせたままだ。動けなくするのなんて容易い。
「なぁ、細波さんよ。うちの殿様にもたんまり飲ませてくれたんだろ? 牛乳」
言いながら一包目の下剤を鳴矢の口へ無理矢理噛ませたペットボトル漏斗の中へ入れてから、すかさず牛乳を注ぎ込む。
ゲホゲホとむせて口の端から牛乳をこぼす鳴矢の鼻をギュッと摘まんで呼吸を塞げば、苦しさから空気を求めて口の中のものを嚥下せざるを得ない。
それを何度も何度も繰り返して、牛乳一リットルとともに下剤を二十包近く飲ませてから、京介は腹痛で顔を歪ませる鳴矢を冷ややかに見下ろした。
「佐山、こいつ、このまま人通りの多いトコへ転がして来い。出来ればさかえグループ本社の近くがベストだ」
そろそろ出勤時間が近い。たくさんの社員たちが社屋を目指して出社してくる頃だろう。
「あー、あと……放り出す時、拘束だけは解いとけ」
そう付け加えるのを忘れなかったのは、身動き出来るのに漏らしてくれる方が、無様で好都合だからだ。
もしかしたら目的地に着くまでに粗相をするなんてことも十分あり得るが、そこはまぁ、仕方ないと佐山にも諦めてもらうしかない。
あくまでも今回の目的は細波鳴矢のプライドと、今まで職場で培ってきたであろうモテ男としての立場をズタボロにしてやることだ。そのためのリスクは、佐山にも目をつぶって欲しい。
「佐山よ。もしかしたらすげぇしんどいことになるかも知んねぇが……引き受けてくれるか?」
「任せてください」
その言葉を聞いて、京介は思わず「すまねぇな」と告げていた。
鳴矢のことは一旦野放しにはするが、すぐ警察に拘束させる。
芽生を誘拐・監禁して市中を連れ回したこと。猫の命を盾に脅迫して婚姻届を書かせたこと。そうして芽生自身は明言しなかったけれど、彼女の頬が赤くなっていたことだって京介はしっかり気付いていた。あれは立派な傷害罪だろうし、あわよくば監禁中の怪我ということで、監禁致傷罪も立証できるよう警察に色々情報をリークしてやるつもりだ。その際は芽生にも少し協力はしてもらわねばならなくなるだろうが、そこはまぁ後からたっぷり甘やかしてケアしてやればいい。殿様のことも、動物愛護法違反のはずだ。
佐山が鳴矢に怪我を負わせているのは、まぁ芽生を助ける時に抵抗されて仕方なく、とでもでっち上げればいいだろう。少々のことならもみ消してやれるだけのコネと力はあるつもりだし、佐山を罪に問わせるようなヘマをするつもりはない。
「頼んだぞ、佐山」
京介の言葉に、佐山が一礼して細波を引きずるようにして倉庫を出て行った。
鳴海は千崎に、鳴矢は佐山に――。
ちょっとばかり他力本願が過ぎるかも知れないが、田畑栄蔵の所へ可愛い芽生を預けている。それが気になるということで今回だけはまぁ大目に見て欲しい。
殺伐とした場にいたせいだろうか。
やけに芽生の屈託ない笑顔が恋しくなった京介である。
京介は短くなった煙草を携帯灰皿にねじ込むと、「じゃ、みんなすまねぇーが後のことは頼むわ。俺は今からちぃーとばかり野暮用があってな」と、ひらひらと手を振って倉庫を後にした。
皆、黙って「行ってらっしゃいませ」と頭を下げるにとどめてくれたが、京介が芽生のところへ向かうことは恐らく周知の沙汰だろう。
錠剤が多いなか、わざわざ顆粒状のものを用意させたのは、当然牛乳に混ぜ込んで《《無理矢理》》飲ませやすくするために他ならない。
SMなんかで使うような開口器でもあれば尚よかったんだろうが、さすがにそこまでの準備はない。代わりにペットボトルの口を咥えさせて漏斗のようにして流し込む算段だ。
口を開けさせたまま固定出来ないぶん人手は取るが、幸い京介には配下が何人もいる。
「んじゃ、ご馳走タイムといきますか♪」
京介は努めて明るく言い放つと、「やめろぉぉぉ!」と抵抗する鳴矢を手下たちにグッと身動きできないようホールドさせた。元々手枷・足枷はさせたままだ。動けなくするのなんて容易い。
「なぁ、細波さんよ。うちの殿様にもたんまり飲ませてくれたんだろ? 牛乳」
言いながら一包目の下剤を鳴矢の口へ無理矢理噛ませたペットボトル漏斗の中へ入れてから、すかさず牛乳を注ぎ込む。
ゲホゲホとむせて口の端から牛乳をこぼす鳴矢の鼻をギュッと摘まんで呼吸を塞げば、苦しさから空気を求めて口の中のものを嚥下せざるを得ない。
それを何度も何度も繰り返して、牛乳一リットルとともに下剤を二十包近く飲ませてから、京介は腹痛で顔を歪ませる鳴矢を冷ややかに見下ろした。
「佐山、こいつ、このまま人通りの多いトコへ転がして来い。出来ればさかえグループ本社の近くがベストだ」
そろそろ出勤時間が近い。たくさんの社員たちが社屋を目指して出社してくる頃だろう。
「あー、あと……放り出す時、拘束だけは解いとけ」
そう付け加えるのを忘れなかったのは、身動き出来るのに漏らしてくれる方が、無様で好都合だからだ。
もしかしたら目的地に着くまでに粗相をするなんてことも十分あり得るが、そこはまぁ、仕方ないと佐山にも諦めてもらうしかない。
あくまでも今回の目的は細波鳴矢のプライドと、今まで職場で培ってきたであろうモテ男としての立場をズタボロにしてやることだ。そのためのリスクは、佐山にも目をつぶって欲しい。
「佐山よ。もしかしたらすげぇしんどいことになるかも知んねぇが……引き受けてくれるか?」
「任せてください」
その言葉を聞いて、京介は思わず「すまねぇな」と告げていた。
鳴矢のことは一旦野放しにはするが、すぐ警察に拘束させる。
芽生を誘拐・監禁して市中を連れ回したこと。猫の命を盾に脅迫して婚姻届を書かせたこと。そうして芽生自身は明言しなかったけれど、彼女の頬が赤くなっていたことだって京介はしっかり気付いていた。あれは立派な傷害罪だろうし、あわよくば監禁中の怪我ということで、監禁致傷罪も立証できるよう警察に色々情報をリークしてやるつもりだ。その際は芽生にも少し協力はしてもらわねばならなくなるだろうが、そこはまぁ後からたっぷり甘やかしてケアしてやればいい。殿様のことも、動物愛護法違反のはずだ。
佐山が鳴矢に怪我を負わせているのは、まぁ芽生を助ける時に抵抗されて仕方なく、とでもでっち上げればいいだろう。少々のことならもみ消してやれるだけのコネと力はあるつもりだし、佐山を罪に問わせるようなヘマをするつもりはない。
「頼んだぞ、佐山」
京介の言葉に、佐山が一礼して細波を引きずるようにして倉庫を出て行った。
鳴海は千崎に、鳴矢は佐山に――。
ちょっとばかり他力本願が過ぎるかも知れないが、田畑栄蔵の所へ可愛い芽生を預けている。それが気になるということで今回だけはまぁ大目に見て欲しい。
殺伐とした場にいたせいだろうか。
やけに芽生の屈託ない笑顔が恋しくなった京介である。
京介は短くなった煙草を携帯灰皿にねじ込むと、「じゃ、みんなすまねぇーが後のことは頼むわ。俺は今からちぃーとばかり野暮用があってな」と、ひらひらと手を振って倉庫を後にした。
皆、黙って「行ってらっしゃいませ」と頭を下げるにとどめてくれたが、京介が芽生のところへ向かうことは恐らく周知の沙汰だろう。