ホンモノはどっち?〜僕と君の証明〜
「き、き、君は……」

「本田伊織だよ」

戸惑う伊織に、伊織そっくりの彼は自己紹介をする。向日葵が胸を張って「言ったでしょ?分身できる薬だって」と笑った。

「さっ、勉強の続きしよ?」

向日葵が珍しくやる気である。ここは教えるしかない。伊織はもう一人の自分と目を合わせ、同時に大きく頷いた。



「この図で、同じ印をつけた辺の長さが等しい時、△AOB=△COBを証明すると何になる?」

「えっと……」

「ある事柄について、すでに正しいと認められた事柄を根拠にして仮定から結論を導くのが証明だよ」

伊織はもう一人の伊織と共に向日葵に勉強を教えていく。自分の分身とはいえ、もう一人教師の代わりの人物がいるとやり易い。伊織は教科書を見つめる分身を見つめながら思った。

(でも、ちょっと違和感があるな……)

向日葵は首を傾げて悩んでいる。しかし、伊織の分身は何も言わずに教科書を見ているだけだ。本物の伊織が口を開いた。
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