Devil's Night
 
「美月。愛してる」


 カイのその言葉で目が覚めた気がした。


――私はカイを愛せない。私は……。


今日、名刺をくれた人の顔が思い浮かぶ。あの人と交わしたかった私のファーストキス……。強烈な後悔がわき上がってきた。


「イヤッ!!」


 私はカイを突き飛ばし、這うようにして彼から離れた。


「あの男と知り合った後のお前は、理性が強い。このまま僕のものになれば、すぐに楽になれるのに」


 あざける声に触発されたように、嘔吐感が込みあげてくる。


「ゴホッ……」


 思わず両手で口を押さえたが、吐き気を止められない。手の中に吐き出したものは、真っ黒いタールのような液体。


「あッ……」


 その濃厚な液体は、てのひらの上で無数の虫が集まって出来た塊のようにうごめき、あっという間に蒸発するように消えた。
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