Devil's Night
少女がカイの方を向いて、
「兄さま」
と呼びかけた。多分、フランス語だ。なじみの薄い言語なのに、彼女の言っていることがわかる。私はこの場面をデジャヴのように知っていた。
そう、確かここはフランス北東部の街、ストラスブーグ。そして、この少女は私自身。
彼女は冷たい顔で言った。
「兄さま、場所を変えない? ここ、風下だから、人の焼ける臭いが体につきそうで嫌だな」
その少女を愛しそうに見ているカイが、目を細め、顔を近づけていく。
「リア」
カイの口からこの名前を聞くのは2度目だ。最初に聞いたのは、ブルーに向かって呼びかけられたときだった。
少女がカイの首に腕を回すと、カイはゆっくりと少女を抱きしめ、教会の屋根に押し倒した。
――兄妹で!?
目の前の光景が信じられなかった。
少女がカイを見つめる。その美しい顔がだんだん私の顔になっていく。
「愛してる」
モニターの中、うるんだ瞳でカイを見上げている自分に、戦慄した。