Devil's Night
 
『ピンポーン』


 突然、リビングに明るいチャイムの音が響く。


「パパだ!」


 絵莉花がソファーから飛び立つようにして玄関へ駆けていく。いつものように。


――何も変わってない。よかった……。やっぱり全て夢だったんだ。


 安堵が深いため息となって口からもれるのと同時に、玄関のドアが開き、長い廊下の先にすらりとした人影が見えた。


「省吾さ……」


 夫の名前を呼ぼうとして、ふと、開け放たれたドアの辺りから流れ込む異様な空気を感じた。


「ウソ……」


 玄関に立っている男の顔を見て絶句した。 


――カイ……。


 悪魔がふたりの子どもたちを両腕に抱えている。いつも夫が着ているようなソフトスーツを着て。陽人も絵莉花も夫に抱っこされているときと同じように、ニコニコ笑っている。私は、カイに抱き上げられているふたりの子どもたちを見て、足が凍りついたように動けなくなった。
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