Devil's Night
 
 ここでカイを夫として受け入れるか、あの地獄のような状況に戻るか。


――イヤだ……。戻りたくない。あの恐ろしい場面へは絶対に。じゃあ、どうすれば……。


 どうしていいかわからないまま、カイの顔を見ていた。


「知りたい? あの地獄へ戻らないですむ方法を」


 カイが薄く笑ってポケットから小さなアンプルを出す。


「あの忌々しい神父の生まれ変わりが帰ってきたら、アイツの飲み物にこれを混ぜるんだ。簡単だろ?」


「その薬……、毒……なの?」


 カイにそう尋ねる声がふるえる。


「そう。今度は美月があの男を始末するんだ。さっき、僕を刺せたろ? 薬を混ぜるぐらい簡単さ」


 楽しそうにカイが笑う。


 私がこの手で夫を殺す……。想像を絶する条件に息が止まりそうだった。


「殺しても殺しても、あの男は美月が転生するのと前後して生まれ変わってくる。けど、しばらくの間はふたりの子どもたちと4人で暮らせるだろ? 美月が死ぬまで、僕は夫として美月を守り、愛し続ける」


 まるで、教会で誓いの言葉を言うようにカイが言った。
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