Devil's Night
その時、不意にリビングの電話が鳴り始め、私はその口実にすがった。
「電話だわ」
カイは警戒するようにアンプルを引っこめ、ポケットに戻す。
「これは後で渡す」
私は必死で笑顔を作り、そこを離れた。受話器を取ると、『美月?』と夫の声がした。ドキリと心臓が跳ね、手が、じっとり汗ばむ。背後にカイが立っているのを感じるからだ。
『今日は美月の誕生日だから、モールで買い物して、外で食事しないか』
聞き覚えのある言葉に思わず、カレンダーを見る。夫の習慣で過ぎた日は斜線で消されていた。
――今日は10月30日……!
私は、カイとともに絵莉花が誘拐された日に戻ってきたのだ。