Devil's Night
 
 そのまま、凍りついた体を引きずられるように、廃屋の中へと連れこまれた。


――どうしよう……。


 瞳だけ動かして、周囲に助けを求める手段をさがすが、近くには人影も民家もない。


 あと数時間早ければ、カイがいたかも知れないのに……。


 引っ張り込まれた廃屋は、物音ひとつしない。
 絶望的な気持ちになりながらも、廃墟の中に逃げ道を探す。
 いつの間にか、視界の端にちらついていたナイフが消えていたが、それでも体は動かない。


「カノジョ、ふるえてるじゃん」


「かーわいい」


「もしかしてバージンだったりして」


「マジで?」


 獲物をなぶるように会話を続ける男たちへ、嫌悪がわき上がる。


 この後、自分の身に降りかかる悪夢を想像して鳥肌がたち、『逃げなきゃ』と、改めて辺りを見回す。


 恐怖に縛られていた体が、やっと動いた。

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