落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 エリゼが魔法をかけ続けると、首元から胸に付けられた魔物の傷口は塞がっていくが、その瞳が開くことはなかった。

「エリゼ、もうおよしなさい」

「だ、大聖女……さま……」

「これ以上は……」

 大聖女様が魔法をかけ続けるエリゼの肩に手を置き、首を横に振った。

「うっ……、うっ……」

 泣き崩れるエリゼの肩を大聖女様はぎゅっと抱きしめた。
 目の前で繰り広げられる出来事が、現実とは感じられず全て幻想のように思えてくる。

 回復魔法では魔物の傷口を塞げても、完治させることはできない。だからエリゼがこのまま魔法を使い続けたら、彼女の魔力が消耗してしまうだけだ。
 治る見込みの無い者に魔力を使い過ぎてはいけない。それは聖女の基本として教え込まれたことだった。だから、大聖女様はエリゼを止めたのだ。

 目の前に横たわるライオネル様にそっと顔を寄せると、まだ微かに息遣いが聞こえる。

 このまま何もせず、ただ息絶えるのを見ていなくてはいけないの?

「ライオネル様……」

 呼びかければ、今にでも瞼が開き、綺麗な金色の瞳で見つめ返してくれそうなのに。

 はらはらと涙が頬を伝い、目の前の景色が歪む。

 どうして私はこんなにも無力なんだろう……。
 八年前も、今も。もう、二度と大好きな人を失いたくないのに。

 私に力があればよかったのに。
 大好きな人を救う力が欲しい――。大好きな人を救いたいの――。

 そう願うと、胸の辺りが急に熱くなってくる。

 パリンッ。

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