落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
「口から体内に魔力を注入して破壊するんだよ。一歩魔力量を間違うとアイリスちゃんまで傷つけちゃうかもだけど、そのまま解術できない方がもっと危険だからねー」

「そうか……。で、口から魔力を注入するとはどうするんだ?」

「そりゃあ、口移し?」

「口うつ……し……。――はっ? 待て、それって、その、つまり、アレではないか!」

 俺は動揺してしどろもどろになってしまう。

「そ、アレだね〜」

「ま、まだ婚約もしてないのに、その様な行為はっ 」

「仕方ないでしょ〜。ライオネルが無理って言うなら、俺がやるけど?」

「それは駄目だ!」

「じゃ、さっさと魔法解かなくちゃ。時間がないよ!」 

「わ、分かった……」

 俺は目を閉じ意識を集中させる。
 八年ぶりに解き放たれた魔力はまだ暴走気味だ。もし力加減を誤ると彼女を傷つけ兼ねないんだ、失敗は許されない。

 深呼吸を続けていると全身を巡る魔力が徐々に鎮静化し、俺の身体、精神と融合する。

 俺はアイリスの小さな唇を指でこじ開けると、そこに自分の唇を重ねた。

 お願いだ、上手くいってくれ。
 君が目を覚ましたら、伝えたい事があるんだ。だから、あの澄んだ黒い瞳で再び俺を見つめ、笑いかけてほしい。

 俺は祈りながら、ゆっくりと彼女の体内に魔力を注ぎ込んだ。
 
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