落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 光がないので、瞼を開けているのかどうかも分からない。音も一切なく、私の息遣いと、手を動かすと服の擦れる僅かな音が聞こえるだけだった。

 しばらくの間じっとしていると眠気が出てくる。身体も少しだるい。魔力を吸い取られているせいかもしれない。
 ふわぁっと欠伸をして、まだ終わらないのかなと考えているうちに、私は眠りに落ちていった。


 ここはどこだろう。私は寝ているようだ。
 目を開けようとしても瞼が重い。
 近くで人の気配がする。

『あら、また二人でこんな所で寝てるのね。起きなさーい、アイリス、アニー』

 あれ? この声はお母さん?

『まだ、寝かせてあげよう。可哀想だよ』

 これはお父さんの声?

『ふふっ、本当あなたって二人に甘いわね』
『そりゃそうさ。大事な娘達だからね』

 お父さんとお母さんの話し声だ。そういえば、アニーと森で遊んでて、木陰で寝てしまったんだった。

 いつもと同じ日常なのに、どうしてこんなにも胸が締め付けられるの?

『じゃあ行こうか』
『そうね』

 二人が遠ざかっていく。待って、お父さん、お母さん! 行かないで! 慌てて起きて隣を見るが、隣に寝ていたはずのアニーの姿がない。

「アニー、どこなの? お父さん、お母さん! 置いていかないで!」

 森の中を必死に探し回るが、三人の姿は見当たらない。

「どうして? どうして、私を置いていったの? どうして……どうして、私だけ、生き残ってしまったの……?」


「――リス、アイリスッ。しっかりしろっ」
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