落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜

 神殿の裏門に着くとライオネル様の腕から解放されたが、いざ下ろされると名残惜しい。

「俺は中までは入れないから、後は一人で大丈夫か?」

「はい、ありがとうございました」

「すぐにエリゼか、他の聖女でもいいが、治療してもらうんだぞ」

「はい、わかりました」

 私は何度もコクコクと頭を振った。
 ライオネル様にジャックを渡すと、彼の腕の中にちょこんと収まる。

「犬は少年の元に連れて行くから心配するな」

「はい、よろしくお願いします。ジャック、うとうとしてますね。疲れたのかな? ふふっ、かわいい〜」

 私がジャックの首元を指で優しく撫でていると、ふと視線を感じてライオネル様の方を見上げた。金色の瞳の中に自分の姿を捉え、息を呑んだ。
 私を見つめるライオネル様の瞳が、いまだかつてないほどの熱を帯びていたから。
 ドキンドキンと鼓動が速くなっていく。

 え……? なに……?

 しばらく目を離せないでいると、ふっとライオネル様の口元が僅かに緩む。

「顔が汚れているな。少しじっとしてろ」

 長い指先で私の左頬を優しく触れる。頬を撫でられる感触がして、とっさに息を止めた。

「っ……、アリガトウ……ゴサイマス……」

 指先が離れて、ライオネル様は相好を崩す。

「もう大丈夫だ。今日はゆっくり休め。それじゃ、またな」

「はい……、お気を付けて……」

 まだ感触の残る頬を押さえながら、遠ざかるライオネル様の背中を見送った。
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