捨て猫を拾ったのは、桃色苺の王子猫
何時間たっただろう?

誰もここは通らないらしい。
話し声は少し遠いところで聞こえる。

・・・寒いなぁ・・・・・・




「・・・猫・・・?捨てられたのか・・・?」

そばで声がした。

低い声だった。




「寒そうだな。せめて毛布ぐらい入れといてくれてもいいだろ。ったく・・・」

「さとみくーん、どうしたの?」




次は、喉風邪でも引いているのだろうか、ガサガサ声が聞こえてきた。
ガサガサ声の主はひょこっと顔を出して段ボールの中を覗き込んできた。

水色の髪に水色の目。
なんだかヤギのような顔をしている。




「猫?どうする?」

「決まってんだろ、家に連れて帰る。」


家に連れて帰る・・・つまり拾ってくれるってこと?


「なんか紙あるよ。」

水色の人が言うと、低い声の主も段ボールの中を覗き込んだ。

低い声の主はピンクの髪で、青い目をしていた。
顔はどこか猫のような感じだ。




「なになに・・・生後半年、オス、名前はない・・・ホントに飼う気あったのか?捨てたやつは。・・・いや・・・飼い猫から生まれた子か?どっちにしろ最低だな。・・・こんなにきれいで可愛いのに・・・。種類はマンチカンだろうな。」

ピンクの人は紙を読み上げて、不満そうに言った。




「お前、うち来るか?あったかいとこだし、飯もやる。いくらでも構ってやるし、好きなことさせてやるし・・・とにかく大事に育てる。」

僕にピンクの人は問いかける。
同時に頭を撫でた。

その手に僕は右の前足をかけてみる。




「にゃあん。(連れてって。)」





ひと鳴きすると、ピンクの人は笑った。





「へへ、そうか~連れてってほしいか~。しゃーないな~。」

まるで言葉が通じたかのようにピンクの人は甘々な声で言う。




そのあと、僕を抱き上げて自分のコートの中に包んだ。
暖かかった。

「じゃあ、一回帰ろっか。」

水色の人が言った。




ピンクの人は僕を抱いたまま歩き始めた。




< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop