手を握ってくれたあなたともう一度
「救われたよ、私は・・」

頬を撫でてくれるリアラの手にゼスは自分の手を重ねる。

「俺・・っ」

「ゼス、私が、眠ったら、サザネとここから、逃げてね・・
きっと今、ボロボロになりながら、妖怪たちと戦ってると、思うからっ」

視界の端で時折、炎があがっているのをリアラは感じていた。
きっとリアラたちを守ろうとサザネが2体の妖怪と戦っているんだろう。

「・・・っ」

何も言葉を発さなかったゼスだったが、覚悟を決めた目をしていた。

「苦しい、気持ちにさせて、ごめんね」

何も言わずにゼスは首を横に振る。
言葉を発したら涙が出てしまいそうでゼスは歯を食いしばることしか出来なかった。

「ゼス、みんなに出会えて、よかったっ
本当に、楽しかったよ・・ッ。
・・はっ、はぁ・・」

呼吸をするたびに腹部が酷く痛む。

「また、会いたい、な・・・ッ
ありがとう、ゼスッ、ほんとうに、ありが、とうっ・・」

その言葉を最後にゼスの頬を撫でていたリアラの手が地面に吸い込まれるように落ちていった。

「っ、ぅっ・・・くそっ、くそっ!!!」

動かなくなったリアラの体を強く抱き締める。

「ッ、リアラ、リアラ・・・、ああああああああああああっっっ!!!」

ゼスの悲痛な声が響き渡った。
涙で顔がぐちゃぐちゃになっていていも構わずみっともなく泣き叫んだ。

「・・・ッ」

その声はサザネにも届いていた。
嫌でも状況を飲み込むしかなかった。
だが、泣いている暇などない。今自分がやるべきことを全うしろ。
自分にそう言い聞かせ、震える手を握り、サザネもまた歯を食いしばりながら目の前の妖怪に集中した。
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