一夜から始まる、不器用な魔術師の溺愛
そして胸の奥が、なぜかどきんと鳴った。

「えっ……」

私は一瞬、固まってしまった。

その人はまた、口元をほころばせる。

「俺も今夜の相手を探してたし。」

——今夜の相手。

つまり“抱く女”ってこと⁉

「えっ?えっ?」

頭が真っ白になる。

こんな超イケメンが、まさかワンナイトラブを探しているなんて。

「えっと……お兄さん、恋人いないんですか?」

ようやく絞り出した問いに、彼はグラスを傾けながら淡々と答えた。

「今はね。」

それだけなのに、なぜか心臓が跳ねる。

勿体ない、なんて思ってしまう自分が信じられなかった。

「ええっと……」

どう返せばいいか分からず視線を泳がせる。

すると、隣にいたはずのリリアの姿がない。

気づけば、彼女はどこかに消えていた。

残されたのは私と、この人だけ。

魔女としてではなく、ただの女として——

運命のように二人きりになってしまったのだ。
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