一夜から始まる、不器用な魔術師の溺愛
大きな鏡に映る自分の姿は、ただの女。

魔女でも、特別な存在でもない。

初めて、誰かのために脱いだ服。

それだけで、胸が高鳴って止まらなかった。

「ほら、おいで。」

低い声に促され、私はシャワー室に足を踏み入れた。

湯気に包まれた空間で、彼は既にシャワーを浴びていた。

濡れた黒髪が首筋を伝い、引き締まった身体を滴が滑り落ちていく。

細いのに無駄のない筋肉、すらりとした肩と胸板。

——ああ、なんて美しいんだろう。

目が離せず、思わず見惚れてしまった。

「石鹸、これ。」

差し出された石鹸を受け取り、慌てて自分の身体をこすり始める。

誰かの前でこんなふうに肌をさらすのは初めてで、羞恥心で胸がいっぱいだった。

(知らない人と、一緒に体を洗うなんて……恥ずかしい)

肩をすくめる私を見て、彼は小さく笑った。

「本当に処女なんだな。」

「えっ……」

思わず石鹸を落としそうになる。
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