離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
彼女が今まで手掛けていたアプリは主に小学生が対象のものが多かったが、縁を産んでからは幼児教育の分野についても積極的に勉強し、実績を残している。
今縁が使っているアプリは大手の幼児教室でも利用されていて、ユーザー数も評価も上々。
彼女という優秀な人材を自分のエゴで家庭に閉じ込めようとしていた過去の自分を、今でも折に触れて反省する。
「はいはい、どれにする? タッチぬりえ?」
「んーん、なじょり」
「なぞり書きね。了解」
妻と息子が頬を寄せ合ってタブレットを覗き込む姿は、見ているだけで日ごろの疲れが吹っ飛ぶ。
ソファで仕事をしていた俺は、パソコンを閉じてそうっと彼らの背後に近づくと、後ろからふたりをまとめて抱きしめた。
「わっ。パパちたー」
「楽しそうだから、混ざりたくなったんでしょう」
うれしそうに声を上げた縁と、俺の本心を見透かしてしたり顔をする悠花。
俺はふたりの頬にそれぞれキスをすると「そうだよ」と素直に肯定した。
好きな人に、好きだと伝える。愛しいから、抱きしめてキスをする。
最愛の妻と子のおかげでそれが当たり前にできるようになった今、俺は世界一幸せだ。
FIN


