天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

 私はホッとしてその場にヘナヘナと座り込んだ。

「……シオン様……」

「アーリーモーニングティーを淹れた。寝室へ持って行こう」

「いいいいいい、いいえ! 私がリビングへ行きます!!」

「そうか」

 シオン様は素っ気なくリビングへ戻っていく。

「……アーリーモーニングティー? どゆこと?」

 この国では、夫が寝起きの妻のために紅茶をベッドサイドで入れることがある。毎朝ではないが、休日や記念日などに夫から妻へ愛を伝える風習だ。

 私は両手で頬を押さえた。

「まるで本物の夫婦じゃない!」

 単純に、誠実なシオン様が形だけでも夫婦を装おうと配慮してくれているのか。
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