天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
「それとも、私、なにかしちゃった?」
蒼白になっている私にドア越しから声がかかる。
「紅茶が冷めるぞ」
私は慌てて立ち上がりリビングへ向かう。推しの入れてくれた紅茶を冷めさせるわけにはいかない。
シオン様はリビングのソファーセットで寝台列車が毎日発行する機内誌を読みながら寛いでいた。新聞のような体裁の機内誌には、立ち寄る町の最新情報や車内の日替わり情報が載っている。
ちなみに、寝台列車には新聞は届けられない。シオン様に余計な情報が伝わらないように統制している。
テーブルには紅茶が淹れてある。紅茶の芳醇な香りと真新しいインクの匂いが混じり合う。流れゆく車窓の景色もあいまって、とても贅沢な気分だ。
(はぁぁぁ……。ガウン姿で朝日をあびるシオン様……想像以上にお美しい……)
私は思わず拝み、一礼してからシオン様の前に座った。
そして、ティーカップを前に再度手を合わせた。
「いただきます」