天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

 ティーカップを手にして紅茶を覗き込む。

(お、推しの入れてくれた紅茶……飲むのがもったいない……真空パックで保存……魔法でなんとかできそうね?)

 私が紅茶を眺め煩悶していると、シオン様が尋ねる。

「どうした? 嫌だったか?」

「いいえ、もったいなくて」

 私は喰い気味で否定する。

「もったいない?」

 私の答えを聞いて、機内誌が微妙に傾いた。きっと疑問に感じたのだ。

(もったいないけど、飲まなかったら失礼だわ! もったいないけど、私の血肉になってちょうだい!)

 私は心で血涙を流しながら、口をつけた。

 目が覚めるようにだろう、濃いめに淹れられたオレンジペコーのミルクティーだ。

 思わずホッと息をついた。
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