天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
「この悪妻が! 本当にシオン殿の幸せを願うなら、宮廷に復帰させるべきだろう? 男は誰でも名誉を重んじる。宮廷で要職に就きたいとシオン殿も思っているはずだ!」

 私はプッと噴き出した。

「やだ。それがどれほどの名誉です? よっぽど私の夫だということのほうが誇らしいではありませんか? 宮廷の要職などいくつもありますが、私の夫の座は世界でひとつだけでしてよ?」

「なんて傲慢な! 勝手に拉致したことは全員が知っているぞ?」

「そうだ、愛されていない悪妻が!」

 私は静かに彼らをねめつけた。思わず低い声が出る。

「だったらなに? 愛されていなかったら問題があるわけ?」

 私がシオン様から愛されていないなど百も承知だ。シオン様が生きていればそれだけでいい。私のことを嫌っても憎んでも、エリカのことを愛していても、それでいいのだ。

 研究者たちは私を見上げると、顔を蒼白にして一歩さがった。

 その視線が私の目線より上なことを不審に思い振り向くと、そこには気配もなくシオン様が立っていた。しかも不穏なオーラが立ち上がっている。
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