天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

(いきなりの推し! なんで怒ってるかわからないけど、それも格好いい……)

 私が息を止めてよろめくと、シオン様は優しく私の肩を抱いた。

(ぁぁぁぁぁ……シオン様のお手を煩わせてしまったぁぁぁぁ)

 混乱している私をよそに、シオン様は研究者たちを見おろした。

「なにを根拠に私が彼女を愛していないと?」

 シオン様が静かに尋ねる。しかし、その穏やかな声は明らかに嵐の前の静けさのような、不安を煽る要素があった。

 研究者のひとりが怯みつつも答える。

「……強引に攫われたことは周知の事実だ。そ、それに、それほどの能力があるのなら、女に飼い殺しなどされず、きちんとした施設で研究に励んだほうが君の将来のためだ」

 シオン様はそれを聞き、冷たい視線を研究者たちに向けた。

「あなた方は誤解されているようだ。拉致されたように見えたのなら謝罪するが、あのときは突然のことで驚いただけだ。私はルピナのもとから去るつもりはない」

 シオン様はそう言うと私を見た。

(推し、推しが私のもとを去らない宣言!! もうこれ以上は望まない!!)

 言葉にならない想いを伝えるべく、ひたすらコクコクと頷いた。

 それを見て、シオン様はクシャリと微笑む。
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