天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
 王宮から戻り、急ぎ魔塔のシオン様の部屋へと向かう。

 すると、シオン様は私が来るのを待っていたかのように、お茶を準備していた。

「シオン様。お話があります」

 急ぎ説明しようとすると、シオン様は私にソファーへ座るように促した。

「顔色が悪い。まずは紅茶を淹れるから待て」

 シオン様に言われ、私は泣きたい気持ちになった。

 シオン様のさりげない気遣いが心に染みる。

 私はシオン様の入れてくれた紅茶をコクリと飲んだ。

 セイロンティーの中に、ローズやオレンジピールが香るフレーバーティはシオン様のお気に入りのものだ。優雅な香りの中に仄かな甘みを感じる。

 ホッと吐息を漏らした。体が楽になる。安心する。

(でも、これももう味わえなくなるのね……)

 そう思うと辛く悲しい。

 しかし、泣くわけにはいかない。
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