天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

「……それに、神殿が私たちの結婚は認めないと言い出しました。神殿の許可がないとなれば、近々破婚となるでしょう……」

 シオン様にとって、私との結婚は魔塔で研究するための契約だ。

 魔塔にいられないのなら契約破棄になるのが当然で、きっと彼もそれを喜ぶにちがいなかった。

「今まで無理をさせてすみませんでした。そして、魔塔の閉鎖後のことですが、いかがされますか? ローレンス殿下はシオン様の出仕を望まれております。でも、気が進まないようであれば、他国へ留学できる準備もしております」

 私は拳を握りしめながら説明した。

(宮廷に戻ったら、シオン様はまたエリカとローレンスに利用されるでしょう。だから、留学を選んでほしいけど……)

 きっと、彼は選ばない。

 それがわかるから悔しくて、悲しくて、空しい。手のひらに爪が食い込んでゆく。すべてが無駄になってしまう。

 シオン様は大きく息を吐いた。

「なぜ、私が留学などしなければならない」

 私はビクリと肩を縮こまらせる。

(わかっていても傷つくわね……)

 ソロソロとシオン様をのぞき見る。
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