大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで
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時は戻り現在。
小まめに連絡を取っていたアイリスと、ベアトリーチェが辺境地に突如押しかけ──見舞いに駆けつけてくれたのだ。相変わらずの行動力だと感心してしまった。
「もぉーーーーー! シャルが倒れたって言うから、本当にビックリしたんだから!」
「ベアト、鼻水が……」
「本当に! シャーロットに死の満開の兆しが出たのかもしれないって思ったら、いてもたってもいられなかったんだからな!」
「アイリス、肩を揺らさないで。あと言葉遣いが戻ってる」
「あら」
「おっと」
二人は一瞬で聖女と淑女としての仮面を被る。
何という切り替えの速さ。そんな二人に心配させてしまったと思い頭を下げた。
「心配をかけてごめんなさい。命に別状はありませんが、旦那様の姿が見えないだけなのです」
「そう聞いているけれど、皮肉よね。姿が見えなくなってから屋敷にいる機会が増えるなんて」
ベアトは黒い扇子を広げて皮肉たっぷりに告げる。歯に衣着せぬ物言いはもはや清々しいものだ。
「そうなんです。せっかく屋敷に戻ってきて下さったのに、あの冷たい目線。眉間に皺を寄せた姿が見られないなんて残念です。姿だけではなくバリトンのいい声も聞こえないけれど、旦那様直筆コレクションが沢山増えたんです。ふふっ、それに一緒に居る時間を作って下さっているの嬉しいわ」
「……あいかわらずね、あんな冷血漢のどこがいいんだか」
「もうベアト。言い過ぎ」
「あら本当のことじゃない」
(懐かしいな)