大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 ベアトリーチェの指摘に私は心臓がドキリとした。
 心臓がバクバクして煩い。

「裏切り。酷いこと……」
「ベアトリーチェ様、アイリス様、その辺りのことは主治医が――」

 ベアトリーチェは漆黒の扇子を開いて、ハンナの言葉を遮った。

「現状維持をしてシャルが回復するならいいけれど、悪化しているじゃない! なら辛くても原因解明をすべきだわ」
「先延ばしにして、取り返しの事態に陥ったらどうするのよ」
「それは……そうですが、これ以上、奥様を追い詰めたら……」

 ベアトリーチェやアイリスの言葉も、ハンナの反論もどちらも私のことを慮ってくれている。それが取って嬉しかった。

「ハッ、差し出がましいことを……。申し訳ありませんでした」
「いいのよ。主人(シャーロット)のことを思うのは悪いことじゃないし」
「ありがとうございます。……お茶のお代わりを用意してきます」

 そう言うとハンナは一礼した後、退出した。
 僅かな沈黙。

 パキパキ、ペキペキ。

(あ、また……)

 殻が割れる亀裂音は鳴りを潜めるどころか、さらに大きな音を立てていく。
 これは幻聴なのだろうか。
 それとも──。

(卵の殻が割れるような音? ……でもベアトやアイリスが気付いた様子はないから、私だけにしか聞こえていない?)

 空気を変えようと私は明るい声で話題を変える。
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