大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 やり過ぎではないだろうか。
 それでなくとも今、旦那様──ベルナルド様の姿が見えなくなって、屋敷の管理や公爵夫人としてやるべきことが山積しているのだ。そう思いアイリスに助け船を求めたのだが、

「ここはシャーロットの仕事が多くて気が休まらないだろうし、本当に静養させたいのなら、この地を離れたほうがいい。離婚じゃなくて別居よ、別居。少しお互いに離れてみて気持ちの整理をつけるの」
「離婚!? 別居!? ま、まって!」
「今回の一件で、公爵も少しはシャーロットのことを気遣うようになったかもしれないけど、全然ダメ。というか領地経営を丸投げってなんなの!? 馬鹿でしょ! いくら経済学を習っていたからって無茶振り過ぎ。独りで抱え込むなって、学院時代から言っていただろう」

 興奮するとどんどん口調が荒くなっていく。
 そしてド正論。いくら裏社会での仕事が忙しかったのを知っていたけど、丸投げはやっぱり抗議すべきだっただろうか。頼られるのが嬉しくて、頑張りすぎた自分を呪いたい。
 もっとベルナルド様を頼っていたら、傍にいたのだろうか。それとも──。

「抱え込み、……それは本当にソノトオリデス」
「急にカタコトになるな」
「うう……別居。旦那様と離れる」
「この土地にいたら、シャルはずっと無理をするでしょう」
「あ」

 辺境地であるここは王都のような物流も少なく、特産品やら名物なども無かったので生活水準もかなり低かった。冬を越すため身売りする女性が多かった報告書を読んだ時は、戦慄したものだ。

 だから王都の商会を通じて毛糸で作る小物やマフラー、手袋などを手の空いている女性たちに声をかけて仕事を用意した。もっとも収穫ができそうな作物の開発もしたわ。その為に必要な導具やら手続なども行ったし、子供たちの学業向上に向けて文字の読み書き、季節の行事、寄付とこの三年間、慌ただしかったことを思い出す。
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