大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 その合間に旦那様との時間を過ごしていたけれど、半分ぐらいは急遽予定が入って外出。気付けば『仕事』と言って屋敷にいない。
 旦那様が大好きだから全然苦にならなかった──はずなのに、なんだか思い返すと一人で頑張って無理をしていたと思う。一人で張り切って、一人よがりで……旦那様にとって私の存在は都合がよかった?
 領地経営をする際に便利だったから。
 ソンナコトナイ、そう何度も何度も自分に言い聞かせた。

 パキン。
 音が耳に聞こえる。

 ふと旦那様への思いに疑問が一石を投じた。
 やはり旦那様は私が領地経営を丸投げしても問題ないから、結婚を承諾したのかもしれない。在学中にどの授業を受けるかで悩んでいたときに、経営学や数学などを進めてくれたのは旦那様だ。

 よくよく思い返せば学生時代、旦那様が私に声をかけてくれたのは学年試験で上位をキープした辺りの頃だった。
 ずっと付きまとっていた後輩の価値を見いだしたから?
 彼はどこまでも合理主義だったのだからあり得る。
 あの時は天にも昇る思いだったので気付かなかった。

 それから領地問題や復興についての話題をされるようになったから一生懸命に調べて、そしたら旦那様が褒めてくれてそれが嬉しくて──。
 会話も増えて、家族同士の付き合いもできて舞い上がっていた。
 父も母も、公爵家にと継ぐことを喜んでくれた。ベルナルド様の親戚の方々も「これで領地経営が」云々って言っていたから浮かれていたのだ。

 ベキベキと音が酷くなる。

 一つ疑いが生まれると、それは次々に増えていく。
 どうして今まで気付かなかったのだろう。
 一緒に居る時間を作ろうと口約束をよくしていたけれど、仕事でドタキャンなんて当たり前。

(でも旦那様の姿が見えなくってからは、時間を作って……)

 それは領地経営をする人間を逃したくないから。私が旦那様を認識できないと噂が広まれば公爵家としての評判に響くから。
 外聞や家を守るためなら時間も作るだろう。
 彼は《王家の犬》であり、裏社会のボスだ。
 ゲームで彼は息をするように嘘を吐き、いろんな人を利用していたのを知っている。
 胸が痛い。
 呼吸が息苦しく感じる。

 バキバキベキベキ。
 殻を破って何かが顔を出そうとしていた。

(婚約や結婚も都合のいい駒として必要なだけで、本当に愛した人は屋敷の外に──!)

 刹那、断片的に旦那様と真っ赤なドレスを纏った女性の姿が浮かんだ。
 ソファに横になり二人は密着して──。
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