大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで
そういえば、どうして私はあのゲームの中で、ベルナルド様に惹かれたんだろう。とても大事なことだったのに、思い出せない。魅力的な攻略キャラがたくさんいたのに、どうして――?
『俺もいつかこんな風に、何処ともしれない場所で、誰にも看取られず、野垂れ死ぬんだろうな』
土砂降りの中で立ち尽くす少年が呟いた言葉。
自分が今しがた殺した男を見て、そう呟いた。
誰にも見つけてもらえず、看取られず、一人でひっそりと死ぬ。
一陣の風が、私の中に吹いた。
「あ」
そうだ。
私はこの一言で、彼が好きになった。
裏社会を取り締まる存在として、幼い頃から殺しの技術を仕込まれ、心を殺す術を見つけたら彼が、子供ながらに自分の未来を察した言葉。
それが酷く、胸を衝いた。
『誰かに看取られて死ぬことは贅沢だ』と彼に言われた気がしたのだ。元の世界で、私の寿命は十九歳まで生きられるかどうかだった。
私にとって明日が来ないかもしれない。何も残せないまま死ぬのは怖い。でも彼にとって、死ぬことより『死に場所』を憂いていた。
だからこの世界で彼を見た時に、彼を独りぼっちにさせないよう、傍にいようと決めたのだ。もし死ぬ時が来ても、誰も知らない場所ではなく、ベッドの上で沢山の孫やひ孫に囲まれて――死因は老衰一択だと。
彼の悲しい死を避けたいと、最初は些細なものだった。それが私、シャーロット・フォン・クリスティとして選んだ生き方だ。
私の寿命は、魔力吸収によって引き延ばされたのも皮肉なことだった。
奪われていたはずの思いが溢れ出てくる。
(ああ、どうして思い出してしまったのだろう。そんなことをしたら──)
鈍い音がした。
胸に突き刺さる氷の刃。
痛みはない。