大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 赤銅色の鮮血が、散りゆく花びらに見えて自分の死を悟った。
 後悔ばかりが押し寄せる。
 私の目の前にベルナルド様がいるはずなのに、自分で立てた目的は結局果たせないまま。

「ベルナルド……さ、ま」
「ああ、そうだ。随分遅くなってすまない」

 低いバリトンの声。
 死ぬ間際なのか、彼の声と姿が見えた。
 私を抱きしめる温もりはとても温かくて、汗ばんだ彼の匂いがとても愛おしい。愛されていないかもしれないと不安を抱えたまま、ここまできてしまった。

 死にたくない。
 そう思いながらも、私のせいでたくさんの未来を大きく歪めてしまった。

「ごめんな……さい」
「謝るのは俺のほうだ。……お前を一人にして追い詰めてしまった。謝っても謝り足りない」
「ちが……。……だ」

 声が上手く出ない。
 口から血が出て、鉄の味で気持ちが悪い。
 私がベルナルド様に相談をしていれば、()()()()()()()()()
 いいや。そもそも推しであった彼と結ばれようなんて、あまりにも烏滸がましい行動を取ったのが全ての始まりだったのだ。
 大好きな人の傍にいることだけが愛じゃない。

 ベルナルド様の幸せのためにも、私は好きだと告げなかったほうが良かったのかもしれない。それこそルディー様の気持ちに応えていれば、()()()()()()()()。それこそ真実の終わり(トゥルーエンド)を迎えられたのではないだろうか。

(私がこの世界を……破滅に追い込んでしまった……)
「シャル。お前に明かしていれば……。でも、もう大丈夫だ」

 そう言ってベルナルド様は、ほんの僅かに口角が上がった。
 あの世で待っていろとか言うのだろうか?
 視界が暗くて、もう何も感じない。
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