大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 チョコレートをひとつまみ近づける彼女に促されて、口を開けた。チョコレートは甘くて幸せな味が口いっぱいに広がる。

(シャーロットに裏家業のことを知られても、今までと同じように接してくれるだろうか……)

 ほんの少しずつ会話が増え、なぜか領地経営について口を出したら、彼女も嬉々として話してくれた。気づけば、その関係の話題を出すことが増えた。

(領地経営ってそれって、結婚まで考えてくれているぅうう? 普段オンとオフを切ったら、俺はダメダメで、泣き虫で、格好悪いのに、そんな俺にこんな可愛い子が? 嫁いでくるの? え、控えめに言って、最高なんだけど!? いやいや。こんな人を殺すばかりのゴミ野郎が、人並みの幸せなんて夢見すぎだろう。死んだ方がいいよな。今さら俺がニタニタするなんて、気持ち悪いし……。硬派でクールな性格が好きだとか言われる可能性だって、充分にある。シャーロット、好き好き愛してる、なんて突然言い出したら、ドン引きするよな……。シャーロットに嫌われたくない)

 この頃になると眉間に皺が顔に刻まれ、無愛想で鉄仮面が板に付いてきた代わりに、素の自分をどんどん殺していった。俺が魔力暴走しなかったのは、隣にシャーロットが笑顔でいたからだ。お日様のように明るくて、優しくて、ちょっと抜けているところが可愛い。
 変なところは真面目で、俺との距離感も弁えているのか空気をよく読んでいた。あいかわらずシャーロットは可愛くて、耐えきれずに頬に触れたら、顔を赤くして──天使がいた。

 それから精一杯の勇気を振り絞って婚約して、結婚した。告白したときも、プロポーズも足が震えていたし、声も上手くでてこなかった。何度も書き直して暗記までしたのに、言葉にできたのは四分の一だったと思う。

 ずっと笑顔で、傍にいたから安心していたんだ。
 明日はちゃんと自分の素と、裏家業のことを話そう。そうやって逃げて、シャーロットに甘えて、寄りかかって、頼り切っていて──。
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