大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで
窘めるジェフに旦那様はピシャリとはねつけた。
ふいに浮遊していた花束がベッドへと歩み寄り、目の前に突き出される。
「お前にやる」
不意に旦那様が初めて私に贈り物をした時と重なった。
無造作に差し出された花束を受け取り、その花束はマーガレットだったことに気付く。たしかこの世界の花言葉で『信頼』の意味をもっていたはずだ。
「これを私に?」
「そのようです」
「嬉しい。お部屋に飾ってもいいかしら?」
「好きにしろ」
言い方や声音だけだと冷たく感じるけれど、そういうときは決まって頭を撫でるか頬に触れてキスをする。
ジェフがいるからかキスされた感覚はない。
もしされたとしても今の私が感知できるかは不明だけれど。
受け取った花束をよく見るとメッセージカードが入っていて達筆な字で一言「愛している」と書かれていた。
癖のある筆記に口元が綻ぶ。そう私の旦那様はこういう小さい贈り物をしてくれる。
「お花とカードとても嬉しいです」
「……そうか」
顔を上げても花束を受け取ってしまったので旦那様がどこに居るのかまったくわからないけれど、なんとなくまだ傍にいるような気がして微笑んだ。
気付いた頃にはベッドが軋み大きなナニカに包み込まれた感じがした。
温かさや、香りなどは感じられない。
けれどそこに旦那様がいる、そんな風には感じ取れた。
「すまなかった」
何に対しての謝罪だろう。
そう口にしかけて私は言葉を噤んだ。
口を開いて閉じる。
もしこの時に自分の心を曝け出したら、何かが変わったのだろうか。