悪女の私がヒロインみたいに溺愛されてます!
「乃愛お嬢様」


校門を出たところで、黒の高級車からシワ一つない同じく黒いスーツを着た男が出てきた。

彼はお父さんの優秀な右腕である秘書、黒岩(くろいわ)

まあまあ整った顔立ちをした彼は、淡々と仕事をこなし淡々と会話をするような何を考えているのか全くわからない人。


「お家まで送らせていただきます」

「…いい。どうせまたお父さんに頼まれたんでしょ?問題児の娘がまた何かやらかさないように見張っとけって」


黒岩は時々乃愛を車で迎えにきてくれる。

だけどそれは監視の意味も込められているから。

忙しい両親に代わって、私の行動を見守るため。

乃愛はわがままで傲慢なくせに、自分の親からの愛なんてとっくに諦めている。

求めようともしない。

二人の顔なんて思い出せないくらい、仕事で忙しい両親とは会っていないし放置されているから。

倒れて入院した時ですら一回も二人が会いに来ることはなかった。

入院費だけ払い、あとは黒岩が諸々の手続きを済ませたようだった。

その日私は、両親からすらも一切愛情を受けずに育ってきた乃愛の気持ちがやっと本当の意味でわかったのだ。
< 42 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop