悪女の私がヒロインみたいに溺愛されてます!
「…社長のご命令ではありますが、そのような理由ではございませんよ」

「他にどんな理由があるっていうの?二人のお荷物でしかない私を押し付けられてるなんて、黒岩もかわいそうだね」


黒岩は珍しく普段のポーカーフェイスを崩し、目を見開いていた。

驚くのも無理はない。

乃愛は両親からの愛を諦めていたけど、それでも心のどこかでは期待をしていたから。

だから、黒岩が何かを言うんじゃないかと不安がって本音はいつも呑み込んでいた。

どうして二人は私に会いに来てくれないの、とか、私のことなんて愛していないんだ、とか。

本当に言いたいことはいつも呑み込んで、黒岩の行動の真意を知っていても何も知らないふりをして従っていた。


でもその乃愛はもういない。

私は愛のない親の顔色を伺うほど無駄なことはしたくない。

なんて思われようがどうでもいい。


「お嬢様、どこに行くのですか?」

「ついてこないで。一人で帰れるから」


黒岩はそれ以上追いかけてくることはなく、スタスタと一人で帰り道を歩いていく。


「おいおい、俺たち友達だろ?」
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