悪女の私がヒロインみたいに溺愛されてます！

ふと、思わず通り過ぎてしまいそうなほど細い裏路地から声が聞こえてきて、今来た道を戻る。

メガネの学ランを着た男の子が、同じ制服を着た男子生徒に壁際に追い詰められるようにして二人は向き合っていた。

…嫌な予感がする。また面倒くさいことが起こるような…。


「は、離して…っ！」

「だーかーら、さっさと金出せって言ってんだろ！」


痺れを切らしたように男子生徒がメガネの男子の顔面を殴った。

その勢いでメガネの男子は地面に倒れ込み、メガネは私の足元まで飛んできた。

同級生なのか知らないけど、どうやらカツアゲをしている場面に遭遇してしまったようだ。

しかも見た目からして、おそらく中学生くらいだろう。

…あれ？このエピソード、どこかで聞いたことあるような…。


「本当にもうないんだよ…！昨日だって有り金全部持っていっただろ…！」

「…あ？あんなのじゃ足りねぇよ。言っただろ？友達でいたいなら、親の金盗んででも俺に寄越せって。いいのか？また明日からぼっち生活に戻っても」


殴られた頬をおさえていた男子生徒がびくっと肩を揺らしていた。

…本当、この世界ってどうして乃愛よりも最悪な人たちばかりいるのだろう。