僕の愛しい泥棒娘
そう言うと颯爽と踵を返して行ってしまった

ケイトもミリアも家の中に入らせていたので
話が聞こえてはいなかったが、ユミアもサリ
ーヌもしばらく動けなかった。

ユミアは昨日の夜の事を見られていたのだ。
言い逃れはできないだろう。

でもすぐにまえようとしなかったし、仕事が
あると言ったのだ。

落ち着いて対処しようと決めるとサリーヌに
いつものように過ごすように言って,自分は
夕飯の支度をする為に、家に引っ込んだ。

見目麗しい男性が現れて帰るまでほんの2~
3分だった。 

サリーヌは心配しながらもユミアが落ち着い
ているので大丈夫だと思いその後はいつも通
り客の対応に追われた。

そして夕方店の前に立派な馬車が横付けされ
た。

そう広い道ではないのでいつまでも馬車が止
まっていると通行の邪魔になる。

目立つのも困るので、心配するサリーヌを尻
目にユミアはさっさと馬車に乗り込んだ。

アウスレッドは紳士的でユミアをエスコート
して馬車に乗らせると自分も後から乗って来
てユミアの前に腰かけた。

馬車には他には誰もいなかった。

「誰にも聞かれたくない話なので、馬車の中
で走りながら話をしようと思うんだが,良い
だろうか?」

「はい、公爵令息様の良いようにして
下さい。どっちにしても私に発言権は
ないと思うので」
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